2015年03月24日
セル&ロンドン響のチャイコフスキー:交響曲第4番、他
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本盤は、ハンガリー出身の名指揮者ジョージ・セルが1962年にロンドン交響楽団を指揮して録音したチャイコフスキーの交響曲第4番ほかを収録したアルバムである。
チャイコフスキーの交響曲第4番は、当時不幸な結婚で悩んでいた作曲者の心境を反映した人生の苦悩と哀愁に関する標題的内容を持った情熱的な曲。
妥協を許さない厳格なアプローチで音楽の本質に迫ることで知られた指揮者、セルが残した名盤中の名盤で、チャイコフスキーが伝えたかったロシアの空気をキッチリ音楽にしている。
セルはこの録音後「私の目の黒いうちは絶対発売させない」と言った逸話が残っている演奏であるが、この逸話を知った時は、とても信じられず、愕然とした覚えがある。
セルとしては、やはり手兵クリーヴランド管弦楽団とは違い、ロンドン交響楽団では自分の思い通り演奏できない不満があったのであろうが、逆説的に言えば、セルとオケが目に見えない火花を散らしながら演奏したが故に、全体を通して、緊張感と気迫溢れる名演となったのかもしれない。
しかしさすがの名門オケ、このテンポ、短い音の連続でも響きの豊かないい音を出しており、何よりチャイコフスキーに欠かせない木管の豊かで輝かしい響きが聴かれる。
センチメンタリズムを極力排したドライで禁欲的なセルの毅然とした音楽づくりに、ロンドン交響楽団は必死で応えながらも、自らの持ち味の音の響きも保ち続け、マエストロの要求との折り合いをつけたようだ。
そのお互いの葛藤に何とか見合う曲としてチャイコフスキーの交響曲第4番は最適だったかも知れない。
セルは過度な感傷を避け、この交響曲特有の重たいイメージをあまり感じさせず、それでいて決して無機的にはならない。
第1楽章の出だしの金管・木管の音に続く弦の音にしてから、非常に大切に音を出しているなと感じさせるものだ。
全体を40分ちょっとで駆け抜けているが、この快速テンポは、かのムラヴィンスキーの1960年代の名演に匹敵するものだ。
全体的な造型や、演奏の性格はムラヴィンスキーの名演に準じるものであり、手兵のクリーヴランド管弦楽団を「セルの楽器」と称されるまでに鍛え上げたセルの片鱗が見られるが、例えば、第1楽章の終結部のテンポの激変や、終楽章のアッチェレランドなど、セルにしては珍しい踏み外しも見られる。
セルに率いられたロンドン交響楽団は、第2楽章で美しい旋律を豊かに奏でたかと思うと、一転、終楽章では一糸乱れぬ超人的なアンサンブルで聴き手を圧倒する。
特に終楽章の気迫溢れる演奏は,ただ単に賑やかな演奏ではなく、緊張感溢れる演奏となっていて、ダイナミックな中にも細やかな味付けもされており、あっという間に聴き終えてしまう。
ロンドン交響楽団の許容力と懐深さによって貴重な「セルのチャイ4」が聴けたことに感謝したい気分だ。
こんな演奏は他に類例がなく、聴き終えたあと適度な興奮と余韻、爽やかな印象が残る、今だに色褪せない名盤である。
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