2015年02月16日
フルトヴェングラーのベートーヴェン:歌劇「フィデリオ」(1953年スタジオ録音)
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いかにもフルトヴェングラーならではの彫りの深い素晴らしい名演だ。
本演奏はスタジオ録音であり、セリフのみの箇所を大幅にカットしていることもあって、ライヴ録音における極めて燃焼度の高いドラマティックな演奏を成し遂げる常々のフルトヴェングラーとはいささか異なった演奏と言えるが、悠揚迫らぬインテンポによって濃密に曲想を進めていくなど深沈とした奥深さを湛えているのが素晴らしい。
なお、フルトヴェングラーには、ベートーヴェンの歌劇「フィデリオ」については、本演奏のほかにも1950年のザルツブルク音楽祭でのライヴ録音盤(数年前にオーパスが見事な復刻を行った)があり、それは本演奏とは異なって極めてドラマティックな演奏であるとともに、歌手陣がきわめて豪華であることからそちらの方を上位に置く聴き手も多いとは思うが、本演奏にも優れた箇所も多く存在するところであり、容易には優劣はつけられないのではないだろうか。
また、本演奏においては各登場人物の深層心理に鋭く切り込んでいく彫りの深さが際立っており、とりわけ第2幕冒頭の序奏などにおいては、1950年盤以上に奥行きのある表現を展開しているなど、その筆舌には尽くし難いような深沈たる荘重さは、フルトヴェングラーとしても最晩年になって漸く到達し得た至高・至純の境地と言えるのではないだろうか。
また、フルトヴェングラーは、1950年盤と同様に、レオノーレ序曲第3番を、マーラーが慣習づけた流儀にしたがって終結部(第2幕第2場)の直前に配置しているが、これが冒頭の序曲ともども凄い演奏だ。
両曲ともに冒頭からしていわゆるフルトヴェングラー節全開。
あたかも交響曲に接するのと同様のアプローチで、劇的でなおかつ重厚な演奏を繰り広げており、スケールは雄渾の極み。
とりわけレオノーレ序曲第3番においては、終結部のトゥッティに向けて畳み掛けていくような緊迫感と力強さは圧巻の迫力を誇っている。
このように、序曲及びレオノーレ序曲第3番だけでも腹がいっぱいになるほどの密度の濃い演奏を成し遂げていると言えるだろう。
歌手陣はさすがに1950年盤の豪華さには劣っているが、それでもマルタ・メードルやヴォルフガング・ヴィントガッセン、オットー・エーデルマンなどの一流歌手陣が最高の歌唱を繰り広げている。
フルトヴェングラーの統率の下、最高のパフォーマンスを示したウィーン・フィルやウィーン国立歌劇場合唱団にも大きな拍手を送りたい。
録音は1953年のスタジオ録音であり、従来盤でもフルトヴェングラーのCDとしては比較的満足できる音質である。
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