2015年02月25日

カラヤンのビゼー:歌劇「カルメン」(新盤)


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一時代を画した《カルメン》だろう。

アルコア版を用い、カラヤン得意の細やかな作品分析によって作りあげたアルバムのひとつであり、カラヤンの残した最上のオペラ全曲演奏のひとつだ。

カラヤンは、20世紀後半の、音楽の美を作り上げた人物の代表で、オペラはその中心にあったのだが、《カルメン》はそのまた中心ということになる。

力を入れつつ、時を得ないで必ずしも最高のキャストが揃えられず、成功しない場合も多かったのだが、これはうまくいった。

そしてカラヤンの求める《カルメン》像が実現した。

カラヤンのオペラはいずれもゴージャスな響きを追求するもので、オペラ・コミーク版でありながらもグランド・オペラ風に響くのが面白い。

とはいえ、絢爛豪華な旧盤と正反対なフランス風のあっさりとして洒落たタッチで、ビゼー本来の創作意図がこうであったのかとわれわれの感じ方を改めてくれるような演奏である。

オペラのなかの場面それぞれが、まるで一番の見せ場であるかのように聴かせてくれる。

各楽器のあらゆる音を聴きわけ、あらゆるテンポの変化をあやつり(もっとも本作の大部分は非常にゆっくりとしたテンポだが)、あらゆる注釈に注意を払って、カラヤンは情熱的に指揮している。

激しいコントラストで描き出されるビゼーの名作は、録音されてから40年も経って、新鮮さこそ失われたが、聴く者に迫ってくる力は変わらない。

もちろん最高のキャストが揃えられたことが、カラヤンにこういう演奏を可能にさせたわけだ。

強烈なアグネス・バルツァのカルメンは、艶っぽく強気なカルメンで、これ以上ないほど役にフィットしている。

斬新でなく、従来のカルメン像の延長線上にあるのだが、ほとんどその頂点を極めているように思える。

バルツァのカルメンは、中に入っている写真では魔女のようだが、歌は艶があり、かつドラマティックな要素も十分で、本当に申し分がない。

激しく気まぐれなカルメンに、ひたすら迫るドン・ホセとしてのホセ・カレーラスもまた、伝統的ドン・ホセ像の、20世紀の頂点だろう。

特に、2人のラストシーンは特に圧巻で、声だけなのに目の前に2人がいるかのような迫力が感じられる。

そして、バルツァの強烈な個性に満ちたカルメンと、カレーラスの情熱に溢れたホセを重厚なカラヤンの指揮が支えている。

カティア・リッチャレッリのミカエラなど、ほかの歌手たちにもまったく弱点がない。

カラヤンのひたむきな指揮によって、バルツァの威勢のいいカルメンは際立ったものとなり、録音時には最盛期を過ぎていたカレーラスのドン・ホセもまた、朗々と声を響かせることになったのだろう。

このドン・ホセは、ほとんど病的に思えるほどに情熱にあふれ、それでいて大きな困難を抱えていることを声に感じさせる。

また、ホセ・ヴァン・ダムは、いかにも不屈の男エスカミーリョらしく聴こえるし、カティア・リッチャレッリの声は人生に疲れきっている様子を伝えている。

リッチャレッリのミカエラには好き嫌いがあるかも知れないが、第1幕のドン・ホセとの2重唱や第3幕のアリアなど、とてもスケールの大きい歌唱を披露している。

ファン・ダム以外はフランス語を母語としていないので、少し発音に疑問を持つところもあるが、それを補ってあまりある歌唱が楽しめる。

誰もにお薦めできる名盤だが、特に、歌の中に演技力・臨場感を求める人は必聴であろう。

ベルリン・フィルも凄い存在感を示しており、カラヤンの指揮の下、鮮やかにうねるようにスケールの大きい演奏を聴かせる。

オペラ・コミックとしての軽やかで風通しのいい《カルメン》とは正反対の、壮麗なグランド・オペラとしての大悲劇だが、これこそカラヤンの《カルメン》で、たとえこれからこのオペラの演奏が変わってゆくとしても、これは座標ということになるはずだ。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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