2015年03月01日

インバル&フランクフルト放送響のマーラー:交響曲第7番「夜の歌」


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インバルは1980年代に、当時の手兵であるフランクフルト放送交響楽団とともにマーラーの交響曲全集を録音した。

いずれも、名演揃いだと思うが、その中でも随一の名演はこの「第7」ではないかと考える。

レコードアカデミー賞を受賞したのも、確かこの「第7」だけであったはずである。

「第7」は、最近ではそのようなこともないと思うが、1980年代は、マーラーの交響曲の中では不人気の部類に属していた。

圧倒的な勝利と異様なパロディ性の共存といった相反する要素が混在したマーラー世界の象徴ともいえる作品。

クレンペラーによる超スローテンポのスケール雄大な名演や、バーンスタイン、テンシュテットによる劇的な名演もあったが、いずれも指揮者の個性の方が際立った演奏であり、「第7」の曲自体の魅力をストレートに表現してくれる演奏はほとんどなかったと記憶する。

そのような中で登場したインバル盤は、マーラーの「第7」の真価を知らしめた初めての名演と言えるものであり、更には、そうした評価は現代においても十分に通用するものと言える。

これまで「難解」と言われてきたこの曲の隅々にまで光を当て、この交響曲に込められたさまざまな意味・感情のすべてを的確に表現した同曲の決定的名演と言える。

骨太で推進力があり、立派な演奏で、ことさら曲の病的な面を強調することもなく、適度に暗さも感じられて絶妙なバランスの上に立った演奏とも言える。

インバルの解釈は、内なるパッションや個性をできるだけ抑制して、マーラーの音楽を純音楽的に響かせようとするものであり、名演ではあるものの、例えば「第9」など、いささか物足りなさを感じさせるものもあった。

しかしながら、「第7」については、そうしたアプローチがプラスに働いており、やや遅目のゆったりしたテンポをとりながら、尻上がりに調子が上向きになる。

「第7」は、終楽章は別にして、第1〜第4楽章には、マーラーの交響曲の中でも特に繊細な抒情や巧みな管弦楽法が際立っており、こうした箇所において、インバルはあらゆる音符に光を当てて、実に精密な演奏を心がけている。

特に第3楽章は、この曲のもつ怪奇趣味が良く現われて、聴き応えがある。

もちろん、終楽章の迫力は、インバルとしても、自己抑制を超えたパッションの爆発があり、いい意味でのバランスのとれた名演と高く評価できる。

この曲の場合ライナーノーツにある通り終楽章の解釈に議論が分かれており、インバルはそれを考慮に入れたのだろう。

考えてみればこの交響曲はブラームスの交響曲第1番のように恐ろしく長い年月をかけて作曲されたものとは背景はまったく異なる訳であり、フィナーレの勝利とはいえない空々しい悲喜劇を思わせる人間的な矛盾を描いたインバルの指揮は素晴らしいというほかはない。

この交響曲の後に作曲される「第9」と「第10」に関して転機となった貴重な交響曲であることについては疑いようがなく、後期ロマン派の複雑な体系の理解に繋がる名盤である。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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