2015年03月08日

ワルター&コロンビア響のベートーヴェン:交響曲全集


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ワルターは、数多くの名録音を遺してきたが、本全集に収められた「第2」と「田園」は、その中でもトップの座を争う不朽の名盤と高く評価したい。

特に、「第2」は、ワルターの最晩年のヒューマニティ溢れる情感豊かな指揮ぶりと楽想が見事にマッチしている。

ワルターは、「田園」にも、同じコロンビア交響楽団と名演を遺しているが、「田園」には、戦前のウィーン・フィルとの名演(オーパス蔵)や、ベーム&ウィーン・フィル(DG)といった強力なライバルがいる。

それに対して、「第2」には、そのようなライバルは存在せず、まさに、本盤のコロンビア交響楽団との演奏こそ、同曲演奏史上トップの座に君臨する至高の名演ということになる。

序奏部は意外にもテンポは速めであるが、主部に入ってからの中庸のテンポによるニュアンス豊かな演奏はセンス抜群。

第2楽章の抒情美はこの世のものとは思えないような美しさであり、終楽章のコクのある堀の深い表現も最高だ。

「第1」も名演。

こちらは、トスカニーニ&NBC交響楽団(1951年盤)のような即物的な表現が好まれる傾向があるが、ワルターのような滋味あふれる表現にも十分な説得力があり、本盤の演奏を名演と評価するのにいささかの躊躇もしない。

ワルターのベートーヴェンと言えば、偶数番の交響曲を得意とした指揮者というのが通説とされている。

確かに、「第2」や「田園」どは、あらゆる同曲の名演中、最上位に掲げられる超名演と評価しても決して過言ではないと考えているが、だからと言って、他の奇数番の交響曲の演奏が拙劣なものであるということは断じて言えないと思う。

例えば「エロイカ」は、確かに他にもライバルとなる名演が多い。

そうした海千山千のライバルに比べると、「第2」や「田園」のように、最上位を勝ち取ることは難しいかもしれないが、そうした順位を差し置いて考えると、最晩年のワルターならではの円熟の名演と評価してもいいのではないかと考えている。

特に、感動的なのは第2楽章で、ゆったりとしたテンポで深沈たる演奏を行っているが、この情感溢れるヒューマンな歌い方は、ワルターと言えども最晩年にして漸く成し得た至芸と言えるのではなかろうか。

両端楽章の力強さにもいささかの不足はないが、これらの楽章については、トスカニーニ追悼コンサートにおけるシンフォニー・オブ・ジ・エアとの1957年盤(MUSIC&ARTS)の方をより上位に置きたい。

残念なのは、コロンビア交響楽団の、特に金管楽器の力量に非力さが感じられる点であり、第1楽章の終結部のトランペットなど、もう少し何とかならないだろうか。

前述のように、ワルターについては、巷間ベートーヴェンの偶数番号の交響曲を得意とした指揮者であると言われている。

しかしながら、奇数番号の交響曲も、それぞれの交響曲の最上位の名演とは言えないものの、ワルターならではの円熟の名演を行っている。

その中でも特に素晴らしいのは、「第7」ではないだろうか。

確かに、この「第7」には、フルトヴェングラーの壮絶な迫力もなく、クレンペラー(1968年盤)の壮麗なスケールも、カラヤン(1978年のパレクサ盤)の強靭な音のドラマなども存在していない。

ここにあるのは、豊かな歌心とヒューマニティ溢れる情感の豊かさだ。

まさに、ワルターは、「第2」や「田園」などの偶数番号の交響曲を演奏するのと同様のアプローチで、「第7」を指揮しているのだ。

したがって、これほど叫んだりわめいたりしない、柔和な「第7」は、他にも類例は見られないだろう。

しかしながら、その温かみのあるヒューマンな情感豊かさは、最晩年の巨匠ワルターだけが表現し得た至高・至純の境地と言えるだろう。

ただ大変惜しいのは、コロンビア交響楽団の力量不足であり、「第7」は、オーケストラにとってもベートーヴェンの交響曲中最大の難曲として知られるが、さすがにこの「第7」は荷が重かったと言える。

とりわけ、トランペットの不自然な響き(特に終楽章)は、演奏が素晴らしいだけに大変惜しい気がした。

ワルターの芸風を考慮に入れれば、「第8」の方が非のうちどころのない名演だと思う。

最晩年のワルターならではの、ヒューマニティ溢れる滋味豊かなアプローチが、「第8」という交響曲の楽想にぴたりと符合するからである。

コロンビア交響楽団も、「第8」に関しては、ワルターの統率の下、なかなかの好演を行っていると言えよう。

これに対して「第9」であるが、ワルターの指揮だけに着目すると、名演と言っても差支えはないものと思われる。

ただ問題は、コロンビア交響楽団の非力さが、この曲の場合、かなり露呈することになっており、終楽章のアンサンブルの乱れなども、これがスタジオ録音とは信じられないような情けなさだ。

それと、終楽章のテノールのアルバート・ダ・コスタの独唱はいささか品を欠き、あまりの情感過多な表現ぶりに辟易とさせられた。

しかしながら、これらを帳消しにしてしまうだけの名指揮をワルターは行っており、特に、第3楽章の豊かな抒情は、ワルターと言えども最晩年になって漸く表現し得た至高・至純の美しさと高く評価したい。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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