2015年02月28日
ムラヴィンスキー&レニングラード・フィルのベートーヴェン:交響曲第4番、他(1973年来日公演)[SACD]
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ムラヴィンスキー初来日時(1973年)の衝撃のライヴ録音で、異常とも言える緊迫感で演奏した貴重な記録である。
ムラヴィンスキーの初来日公演は、日本の音楽関係者に大きな衝撃を与え、特にベートーヴェン「第4」での非ドイツ的アプローチによる凄まじい演奏は語り草になっている。
本盤のベートーヴェン「第4」は、ムラヴィンスキー&レニングラード・フィルの黄金コンビの凄まじさを存分に味わうことが出来る超名演と高く評価したい。
ムラヴィンスキーのCDは、DGにスタジオ録音したチャイコフスキーの後期3大交響曲を除くと、録音状態が芳しくないのが難点であったが、本盤は信じられないような鮮明な音質であり、これにより、ムラヴィンスキーの透徹したアプローチを存分に味わうことが出来るようになったのは、実に幸運の極みと言える。
この録音は以前ロシアン・ディスクから粗悪な音質でCD化されていたが、今回はNHKに保管されていたマスター・テープを使用し、入念なデジタル・リマスタリングを施した結果、ムラヴィンスキーの全CD中屈指と言える鮮明な音質に仕上がった。
ムラヴィンスキーのベートーヴェン「第4」は、理論的な音楽の造形が明快で、ここまでくると気持ちいい。
第1楽章の冒頭のややゆったりとした序奏部を経ると、終楽章に至るまで疾風の如きハイテンポで疾走する。
ここはテヌートをかけた方がいいと思われる箇所も素っ気なく演奏するなど、全くといいほど飾り気のない演奏であるが、どの箇所をとっても絶妙な繊細なニュアンスに満ち満ちている。
切れ味鋭いアタックも衝撃的であり、ムラヴィンスキーによって鍛え抜かれたレニングラード・フィルの鉄壁のアンサンブルも驚異の一言である。
各奏者とも抜群の巧さを披露しているが、特に、終楽章のファゴットの快速のタンギングの完璧な吹奏は、空前絶後の凄まじさだ。
同様のタイプの演奏としてクライバーの名演(バイエルン国立管弦楽団とのライヴ録音(オルフェオのSACD盤))もあるが、内容の彫りの深さにおいて、ムラヴィンスキーには到底太刀打ちできるものではないと思われる。
アンコールの2曲は、この黄金コンビの自家薬籠中の曲だけに、全く隙のないアンサンブルを披露しており、そうした鉄壁のアンサンブルをベースとした圧倒的な迫力と繊細な抒情が見事にマッチングした超名演だ。
このCDの価値を高めているのは、NHKによる良心的な録音、及びアルトゥスによる優れたリマスタリングにもよる。
会場ノイズを除去しすぎることもなく、徒らな効果も狙うこともなく、きわめて真っ当な音で勝負してくれたのが、何よりありがたい。
このような中で、今般、待望のシングルレイヤーによるSACD化がなされるに及んで大変驚いた。
音質の鮮明さ、そして音場の幅広さ、音圧などのどれをとっても一級品の仕上がりであり、あらためてSACD盤の潜在能力の高さを思い知った次第である。
まさにムラヴィンスキーの芸術を知る上で欠く事のできない名SACDの登場と言えるだろう。
いずれにしても、ムラヴィンスキーによる圧倒的な超名演を現在望みうる最高の高音質SACDで味わうことができるのを大いに喜びたい。
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