2015年03月02日
C・クライバー&ウィーン・フィルのブラームス:交響曲第4番
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超完全主義者カルロス・クライバーが50歳の時の録音で、クライバーの数少ないスタジオ録音中、最高の名演だと思う。
ヨハネス・ブラームスがこの曲を作曲した時とほぼ同年齢の時期の録音である。
ブラームスの「第4」は数ある交響曲の中でも最もユニークなものではないだろうか。
古色蒼然とした外観をまといながら、内に秘めた心からのロマンティックな想い、各楽器の特徴を知り尽くした管弦楽法、このような交響曲に名演を残せるのは、ほんの限られた指揮者とオーケストラだけであろう。
このクライバー盤は、絶妙なテンポの間と、巧みなオーケストレーションで、最高の名演奏の1つであることは良く知られている。
ブラームスの「第4」へのクライバーのアプローチは、名人の一筆書きのような、やや速めのテンポ設定の中、内容豊かなニュアンスを随所に感じさせるという味の濃いものであり、過去の名演では、シューリヒトやムラヴィンスキーに近いものである。
確かに、この録音当時50歳であったクライバーに、シューリヒトやムラヴィンスキーのような深みを求めるのは酷であるが、逆説的に言うと、この若さにしてこれだけのブラームスを指揮したという若武者の快挙に拍手喝采を送るべきであろう。
有名な1982年12月にベートーヴェンの交響曲第4番を練習中、意見の相違で楽員と対立し、定期演奏会をキャンセルしてしまったという所謂「テレーズ事件」の少し前であり、妥協を許さないクライバーと職人集団ウィーン・フィルの面々のぶつかりあいがまずきっとあって、徹底したこの曲についての論戦があってその後、録音したとしか思えない。
ブラームス最後の交響曲を演奏するにあたって、クライバーとウィーン・フィルの譲れないものを感じさせ、それが熱となり感動を呼ぶ。
物悲しい一面を強調した演奏も多いのであるが、この演奏は凛とした風格を美しい音色とテンポで表現しており弛緩といったものがない。
聴き始めから直ぐにブラームスの懐かしくもロマンティックな世界に引き込まれ、時間の経つのを忘れて聴き惚れる、そして驚くほど速く全曲を聴ききってしまう、素晴らしい音楽であり演奏である。
音楽の構成をありありと示してくれるよう表現であり、個々の楽器も十分に鳴っている。
この演奏を支えているのは、クライバーの天才的な音楽性は勿論であるが、オーケストラを歌わせる能力、良く考え抜かれたダイナミックスの配分、各楽器の実に巧妙な使い方、最終楽章の各変奏における特徴の把握、曲を分析し尽くした努力であろう。
しかし、音楽を聴いてみれば流れるように自然に良く歌う演奏であり、作為的なところは全く無い。
ややもするとウィーン・フィルは箍の緩んだ演奏をすることのある気まぐれ楽団であるが、クライバーにかかると真の実力を発揮しており、それが、クライバーの指揮するウィーン・フィルの魅力となっている。
ウィーン・フィルが一体化した結合感ある有機体になって哀しさに泣いているような演奏であり、第1楽章などまるで管の音がひらひらと哀しげに墜ちてくるような錯覚すら覚える。
これほどの指揮者はもう現れないだろうとさえ感じさせる神のタクトだ。
円熟期を迎えつつあった天才クライバーの、この曲に対する深い理解と曲に対する畏敬の念を感じられる名盤と言えるだろう。
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