2015年03月03日
カラヤン&ベルリン・フィルのシェーンベルク:浄夜、ペレアスとメリザンド
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本盤は、カラヤンにしては異例のレパートリーで、1974年発売の≪新ウィーン楽派管弦楽曲集≫より代表的な作品を集めたアルバムである。
シェーンベルクという新ウィーン楽派と称される現代音楽の作品を世に広げた記念すべき録音と高く評価したい。
カラヤン唯一のスタジオ録音で、精緻かつスケール豊かな表現と、それに万全に応えるオーケストラの完璧な合奏力を堪能できる1枚。
カラヤン&ベルリン・フィルの絶頂期の録音で、あの妖艶さが多少の好き嫌いを生むとはいえ、精緻さ、音の輝き、腰の強さなど、すべてにおいて超一級であり、録音もまったく色褪せていない。
カラヤンは、バロック音楽から近現代音楽に至るまで、膨大なレパートリーを誇り、数々の名盤を遺したが、その中でも、最高峰に位置づけられる録音の1つが、この新ウィーン楽派管弦楽曲集ということになるであろう。
新ウィーン楽派と言えば、どうしても取っ付き難いイメージがあるが、カラヤンならではの解り易いアプローチによって、そうしたイメージを覆すことに成功したのが素晴らしい。
「12音階」とか「無調性」とか、未だに多くの音楽ファンから「難曲」だと敬遠されがちな新ウィーン楽派作品を、ここまで極限的なまでに鮮明かつ美しい音楽に仕上げられたのは当時のカラヤン&ベルリン・フィルだけではないだろうか。
カラヤンの入念な解釈が、1970年代楽団史上最高峰の状態にあったベルリン・フィルの機能性を十二分に生かし、贅沢に使い尽くした感のある名演奏である。
カラヤンの圧倒的な統率力とベルリン・フィルの卓越した合奏力、全盛時代の双方がガプリ四つに組んだ本演奏こそ、当該曲集の史上最高の名演と言っても過言ではあるまい。
カラヤン得意の優美なレガートも見事に決まっており、特に、シェーンベルクの「浄夜」など、この世のものとは思えないほどの美しさで、大きな深みと響きの豊かさが楽しめる。
シェーンベルクの全作品中おそらく最も演奏機会の多い「浄夜」であるが、カラヤンはこの作品の入り組んだ声部にまで光をあてつつ官能的な演奏を繰り広げていて、特に、女が告白をする部分の陶酔的高揚は比類がない。
ブーレーズなどによるスコアにX線を当てたような分析的な演奏とは正反対の、この曲が当初から持つ世紀末的文学世界に根ざした名演で、ベルリン・フィルの合奏力も凄い。
このシェーンベルクの代表作、「浄夜」は名曲でコンサートにもとりあげられるが、ひとつだけ落とし穴がある。
この曲は演奏者が美しさを引き出そうとすればするほど、作曲者の意図から離れ、逆に作曲者の心理と指示に従えば従うほど、美しさが失われていくのだ。
その落とし穴をカラヤンは見事に克服し、非常に美しく、かつ、シェーンベルクの意図を汲んだ曲をレコーディングした部分をつなぎあわせ、ミキシングすることにより、両方の条件を満たした完璧な「浄夜」をつくりあげることに成功した。
コンサートでは決してこのようなアンサンブルの名演は聴く事は不可能で、録音技術を駆使してこそ仕上がったというクラシック音楽世界では伝説の音楽録音と言える。
この演奏はそういう意味でこの曲の最高の録音と言えるだろう。
また、シェーンベルクが書いた最も編成の大きなオーケストラのための作品「ペレアスとメリザンド」では豊かでセンシティブなバランスを備えている。
演奏はスタンダードであり、だからこそ、難解と言われる曲の持ち味が素直に解かるので、聴きやすく、現代音楽の入門たる歴史的名盤となっている所以であろう。
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