2015年03月05日

ムラヴィンスキー&レニングラード・フィルのチャイコフスキー:交響曲第4番、シューベルト:交響曲第8番「未完成」[SACD]


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SACDにしては録音にやや難があるとはいえ、とても半世紀も前の録音とは信じがたく、ムラヴィンスキーが残した録音の中でも屈指の高音質であり、彼の高踏的な芸術を十分に味わえる。

チャイコフスキー「第4」の演奏は壮絶そのもので、尋常でない集中力と只事でない迫力のある音塊が眼前に繰り広げられる。

ただひたすら音に圧倒され、あっという間に時が過ぎていくが、ここに一期一会の再現芸術の本質があるように思う。

この曲は、大音響炸裂の剛演でも十分に楽しめるし、また情緒に耽溺する柔演でも満足できる、許容範囲の広いものであるが、その両方の面で突き詰めようとした、まさにムラヴィンスキーならではのもの。

本盤の演奏においては、約40分弱という、史上最速に限りなく近い疾風の如き快速のテンポで演奏されており、その演奏自体の装いもいわゆる即物的で純音楽的なアプローチで一貫しているとも言える。

他の指揮者によるチャイコフスキーの演奏において時として顕著な陳腐なロマンティシズムに陥るということはいささかもなく、どこをとっても格調の高さ、そして高踏的で至高・至純の芸術性を失うことがないのが素晴らしい。

それでいて、素っ気なさとは皆無であり、一聴すると淡々と流れていく各フレーズには、奥深いロシア音楽特有の情感に満ち溢れていると言えるところであり、その演奏のニュアンスの豊かさ、内容の濃さは聴いていて唖然とするほどである。

木管楽器や金管楽器の吹奏にしても、当時の旧ソヴィエト連邦のオーケストラの場合は、独特のヴィブラートを施したアクの強さが演奏をやや雑然たるものにするきらいがあったのだが、ムラヴィンスキーの場合は、徹底した練習を繰り返すことによって、演奏をより洗練したものへと変容させているのはさすがと言える。

そして、これら木管楽器や金管楽器の洗練された吹奏は、ムラヴィンスキーの魔法のような統率の下、あたかも音符がおしゃべりするような雄弁さを兼ね備えているのが素晴らしい。

弦楽合奏も圧巻の技量を誇っており、とりわけロシアの悠久の大地を思わせるような、重量感溢れる低弦の厚みも強靭なド迫力だ。

加えて、その一糸乱れぬ鉄壁のアンサンブルは紛れもなくムラヴィンスキーの圧倒的な統率力の賜物であり、とりわけ終楽章の疾風の如きハイスピード、それにアンサンブルを一切乱さずにぴたりとついていくレニングラード・フィルの巧さは圧倒的だ。

しかもかなり高いピッチで演奏しておりテンションも凄く高い。

「未完成」は、もちろんパワフルながら、多様なニュアンスの込め方にむしろ驚く。

とにかく多様なニュアンス表現にすべてをかけたような演奏で、ムラヴィンスキーということで予想する剛毅さや迫力はむしろ後退し、繊細で穏やかな部分が目立ったもの。

それにしても木管の繊細さ、弦のつややかさ、これが他のロシア系の指揮者と異なるムラヴィンスキーの音楽であり、それがかえって本質を捉えているように聴こえる。

孤高の芸術家として歩んできたムラヴィンスキーそのものを示しつつ、巨匠の描く凄惨な地獄と妖美な黄泉の国を垣間見ることになる。

特に、第1楽章展開部の金管楽器の強奏や、第2楽章の中間部の盛り上がりの箇所をソフトにに始めるところにこそ、ムラヴィンスキーを聴く醍醐味があるだろう。

それにしても何という指揮者、何というオーケストラだろうか。

全体的に金管が威力を発揮しているが、少しも下品にならないのは本当に凄い実力であり、ムラヴィンスキーの優れた薫陶の賜物であると言えるだろう。

ライヴ録音とのことであるが、まったくノイズやミスがないことに驚嘆する。

この音源の出所については様々な議論を呼ぶだろうが、そんな議論を吹き飛ばしてしまうぐらいの超名演の登場だ。

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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