2015年06月20日
フランソワのラヴェル:ピアノ曲全集
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フランソワというピアニストは、天性のラヴェル弾きではないかと思う。
ラヴェルのピアノ独奏曲を決して理詰めで演奏するのではなく、これほどまでに詩情豊かに弾いた例は他にあったであろうか。
それくらい、ラヴェルの音楽を自らの血や肉として、それこそ天性の赴くまま、自らの感性の赴くままに弾いているような感じがする。
そういった意味では、自由奔放とも言えるが、アルゲリッチのようにドラマティックというわけでもない。
そこはフランス人ピアニストの真骨頂とも言うべきであるが、自由奔放に弾きつつも、フランス風のエスプリ漂う瀟洒な味わいを失うことがないのだ。
思い切った強弱やテンポの変化など、あくの強ささえ感じさせるほど相当に崩して弾いているのに、そこから生み出される音楽の何と言う味わい深さ。
これはフランソワというピアニストの類まれなる芸術性の高さの証左であると考える。
ここには理詰めと言った概念は薬にしたくもなく、即興性といった言葉がぴったりくるような思い切った強弱やテンポの変化が連続している。
いわゆる崩して弾いているというものであり、思い切ったテンポ設定や強弱の変化など、下手をすれば、楽曲の全体像を崩してしまいかねないような即興的な表現を垣間見せている。
ところが、出てきた音楽のフランス風のエスプリ漂う瀟洒な味わいが、そのような危険に陥ることを回避し、それこそ、前述のような詩情豊かな音楽が構築されているのだ。
これは、まさにフランソワの天賦の才能と言うべきであり、天性のラヴェル弾きと評しても過言ではあるまい。
これほどまでに崩して弾いているのに、やり過ぎの印象をいささかも与えることなく、随所にフランス風のエスプリ漂う瀟洒な味わいに満ち溢れているというのは驚異的ですらあり、フランソワの芸術性の高さを窺い知ることが可能だ。
どの曲をとっても詩情の塊のような素晴らしい名演揃いであるが、特に、夜のガスパールは、そうしたフランソワの芸風がてきめんに表われた名演である。
夜のガスパールを得意としたピアニストとしてはアルゲリッチがおり、アルゲリッチも自由奔放な、ドラマティックな名演を成し遂げたが、フランソワの場合は、加えて、前述のようなセンス満点の瀟洒な味わいがプラスされているという点に大きな違いがある。
優雅で感傷的な円舞曲やクープランの墓も、その即興性豊かな演奏によって、他のピアニストによる演奏とは全く異なる表情が随所に聴かれるなど、実に新鮮味溢れる名演に仕上がっている。
亡き王女のためのパヴァーヌも、センス満点に弾いているが、それでいて情感の豊かさにいささかの不足もないのは、殆ど至芸の領域に達している。
そして、特に感動的なのは鏡の5曲であろう。
ラヴェルの華麗なオーケストレーションを思わせるような色彩感溢れる各曲を、フランソワは、詩情豊かな絶妙なピアニズムで弾き抜いて行く。
各曲の描き分けも完璧であり、ピアノ独奏版としては、最高の名演と言ってもいいのではないか。
4手のためのマ・メール・ロワも、バルビゼとの相性が抜群であり、その優美で繊細な抒情美には出色のものがある。
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