2015年04月29日
ルービンシュタインのブラームス:ピアノ協奏曲第2番(オーマンディ)、シューマン:幻想小曲集
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名匠、名伴奏者オーマンディが指揮するフィラデルフィア管弦楽団とがっぷり組み合ったブラームスの第2協奏曲は、ルービンシュタインによる4度目の録音で85歳のピアノとは思えない矍鑠ぶりを記録しており、バックハウス&ベーム盤と並ぶ名演と言えるだろう。
ブラームスは、何よりもルービンシュタインの堂々たるピアノが素晴らしい。
ルービンシュタインの音楽が円熟を極めると同時にテクニックの水準が非常に高いレベルにあった、またとない貴重な時期の演奏である。
ブラームスの演奏には、堅固な造形が前面に出たものと、ロマンティシズムが前面に出たものがあり、この演奏は後者に属する。
しかし構成感や造形も申し分なく、足腰がしっかりしていてバランスがピカイチ、これこそブラームスの全体像を見事に捉えた演奏である。
自然な情感が実に豊かで、気難しくはないけれども歯ごたえがしっかりしているので、聴いていて心地よく音楽の流れに身を任せることができ、同時に感慨や高揚感も十分である。
作品の良さが自然に、トータルに引き出されているのでうっとうしさや嫌みがなく、内容充実とともに繰り返し聴きたくなる。
さすがに若いころからブラームスに傾倒して長年にわたり演奏を積み重ねてきただけのことはある。
この人特有の低音域の豊かさとまろやかで深い音色、充実した分厚い和音の響き、何よりテクニックに安定感と余裕があり、それを派手にひけらかすことなくブラームスの音楽と一体化させている。
ルービンシュタインのステレオ録音には、とかく「この年齢にもかかわらず」との評がありがちで、確かにそう言いたくなる演奏があるのもわかるところではある。
しかし、このみずみずしくてテンポが遅すぎず、流れに滞りのない演奏にはそういったご心配は一切無用。
人生の辛酸を舐め尽くした巨匠の味わい深い演奏が、生涯独身を貫いて、人生の寂しさやわびしさを人一倍感じ、華麗さとは無縁の渋い作品を生み出してきたブラームスの音楽に見事に符合する。
オーマンディ指揮のフィラデルフィア管弦楽団は、いささか音の重心が軽く、ブラームスとしては今一歩深みが乏しい気もするが、確かな技量と様式感で、ピアノと一体化した解釈が素晴らしい。
ルービンシュタインの堂々たる演奏を加味すれば、総合的評価として、本演奏を名演と評価することに躊躇しない。
録音もピアノとオーケストラのバランスがとてもよく、奥行き感や残響がうまく捉えられていて、ふくよかで豊かな表情を生み出している。
ルービンシュタインの協奏曲録音には、たとえステレオでもこれらの要素に違和感があるものがいくつかあるのだが、この録音は彼のものでも最高の状態であろう。
他方、シューマンは、ルービンシュタイン生涯最後のセッション録音だけに、実に演奏の奥が深く、作品の内面的なロマンティシズムを見事に描き出していて余すところがない。
冒頭の「夕べに」からして、他のピアニストとは次元の違う音のドラマが繰り広げられており、この幻想小曲集こそ、ルービンシュタインが人生のゴールで到達した至高・至純の境地と言えるのだろう。
幻想小曲集の随一の超名演と評価したい。
Blu-spec-CD化によって、ルービンシュタインの名演がより鮮明に味わうことができることを大いに喜びたい。
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