2015年03月12日

ベームのモーツァルト:アイネ・クライネ・ナハトムジーク、ポストホルン


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清冽な活気と優美な楽想を備えた珠玉の名作第13番、駅馬車用のポストホルンが巧みに用いられているところから標題が付された第9番、モーツァルトのセレナードの中でも特に人気の高い、美しい旋律が次々と流れてくる2曲を、カール・ベーム指揮による2大オーケストラで、音楽の本質をしっかりと捉えた瑞々しい演奏が繰り広げられている1枚。

ベームが晩年に残した、モーツァルトのセレナードやシュトラウスのワルツなどは本来の喜遊性が後退していて、よりスケールの大きな管弦楽曲としての高い完成度を目指した「志」の高い作品となっている。

全曲を通じて中庸の美を頑固なまでにわきまえ、整然とした秩序の中に表現されたセレナード集で、遊びを許さないベームの生真面目な性格が良く表れている。

「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」のように、ごくポピュラーなレパートリーにおいてもウィーン・フィルの自然発生的な歌心の流出はやや抑えられて、洗練された音楽性と古典派特有の形式美の表出のほうが勝っているが、こうした解釈が聴き古された名曲にかえって新鮮な印象を与えているのは指揮者の力量の示すところだろう。

この曲をベームとウィーン・フィルは楽しく、慈しむように演奏しており、その一糸乱れぬ演奏から、指揮者とオーケストラの一体感も伝わってくる。

そしてベームはこの作品を自分の最も身近なところに引き寄せ、最大の愛情をもって暖かく可愛がるように指揮しており、まさに心を開いた音楽を聴くかのようである。

ウィーン・フィルがベームと心をひとつにした演奏を聴かせており、優雅でしかも洗練された美しい音色に心もあらわれる。

ライナーノートによれば、この曲が録音されたのは、ベームとウィーン・フィルがモーツァルトの管楽器のための協奏曲集やベートーヴェンの「ミサ・ソレムニス」を録音した後、その仕事をなし終えた満足感のなかで、「さらに音楽したい」という気持ちがこの演奏となり、「音楽する喜びにあふれている」とあるが、優しさのこもった名演奏だと思う。

枯れたといった形容は全く当てはまらない、格調高く、かつ音楽への愛・創作活動に携わることへの喜びに満ちている。

ただ、1974年というベームの演奏のリズムにやや硬直化が見られ始めた時期の録音でもあり、やや生硬さが感じられるのが唯一の難点と言えるだろう。

無いものねだりながら、これがベームの壮年期に録音されていれば、溌剌とした運びに、ウィーン・フィルの魅力がブレンドされ、さらに魅力的だったろう。

一方「ポストホルン」は1970年という録音時期もあり、モーツァルトの多彩でシンフォニックなオーケストレーションを遺憾なく再現した精緻で、しかも力強い指揮ぶりが冴えている。

ベームならではの厳しい造型の下、ベルリン・フィルならではの重厚さを生かしつつ、モーツァルトならではの高貴な優美さを兼ね備えた稀有の名演だと思う。

細部まで厳しく仕上げるベームの指揮、一流ソリストの集団のようなベルリン・フィルの演奏、クリアにして重厚な音質のグラモフォンの録音、どれをとっても極上だ。

ベームとベルリン・フィルの息の合った演奏が聴けて、ベルリン・フィルの弦の響きがいつもより柔らかに聴こえるのは、ベームの指揮によるものかと思ってしまう。

これも聴きどころいっぱいの曲であるが、第3楽章と第4楽章のフルートとオーボエの掛け合い、第6楽章のポストホルン(郵便馬車のホルン)の演奏などがハイライトと言えようか。

ゴールウェイとコッホという当時のベルリン・フィルのスター・プレイヤー同士の華麗な掛け合いや、アイヒラーによる艶のある朗々たるポストホルンの吹奏も実に素晴らしく、ソロの美しさと巧妙なアンサンブルが本名演により一層の華を添えている。

ベームのモーツァルト指揮者としての真価を知るには格好の1枚であり、モダン楽器による演奏の代表として今後も愛聴されるだろう。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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