2015年03月14日

カーゾンのシューベルト:ピアノ五重奏曲「ます」/ドヴォルザーク:ピアノ五重奏曲


この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。



ピアニストとして唯一“サー”の称号を与えられたクリフォード・カーゾン(1907〜82)は、イギリス出身でシュナーベルに師事、欧米で偉大なピアニストとして尊敬を集めた。

カーゾンはジョージ・セルが敬意を払ったただ1人のピアニストだけあって、技巧の誇張や表現の虚飾の微塵もない格調高い音楽を聴かせた。

磨かれた音の美しさとタッチの絶妙さと相俟って、(先生の)シュナーベルから学びとった造型とロジックが、しっかりとした骨格を与えている。

カーゾンには“シュナーベルのような”重厚で堅固なベートーヴェンやブラームスの演奏を期待させた。

だがカーゾンは、むしろシューベルトをひっそり弾くことに喜びを感じるようなピアニストであった。

こだわりの人ゆえに録音が少ないのだが、その希有なまでに気品あるピアニズムが聴けるのはありがたい。

両曲とも第1ヴァイオリンはボスコフスキーであるが、ウィーン・フィルの面々との相性もぴったりで、古き佳き時代のウィーンを偲ばせる、馥郁たるロマンを湛えた演奏で、優雅で風格ある演奏を聴かせてくれる。

まずは春のきらきらした光に包まれた《ます》が素敵で、清流のごときカーゾンのピアノと感興あふれるウィーンの弦が絡み合い、5月の森の生き物たちが生き生きと喜びを発しているかのようだ。

ともすればシューベルトを優美なリリシズムでロマン的に歌い過ぎる傾向のなくもないボスコフスキーらウィーンの演奏家たちに対して、カーゾンのピアノが、素朴と言っても過言ではないほどストレートに、シューベルト若き日の思いを落ち着いたテンポに乗せて展開する。

真ん中のスケルツォ楽章がきびきびと輝きにあふれたリズムが演奏に活力を加えるのも興味深いアンサンブルとなっている。

それを挟む第2楽章アンダンテ、第4楽章の《ます》の主題による変奏曲はきめ細かく歌い、カーゾンとボスコフスキーの妙技が楽しめる。

さらに両端楽章では華美を抑えぎみに若きシューベルトらしい素朴なリリシズムを浮かび上がらせる。

録音でもピアノを中心に弦が左右に配列されているが、ステレオ感の強調を避けて、全体のまとまりを重視した“渋い”仕上がり。

一方ドヴォルザーク円熟期の力作は、親しみやすい民族色と初々しい感情の輝きがあって、一篇の感傷詩集をひもとくような魅力があり、ドゥムカによる第2楽章など忘れられない美しさだ。

演奏もこぼれるような歌の心と豊かなリリシズムの息づかいにあふれ、しっとりとした情感と優美な歌が美しい。

カーゾンのピアノは作品の核心に肉薄していく力強さと底光りのする美しさがあり、まさに一家言をもつ大家の至芸と言えよう。

カーゾンの一見控えめだが様式的に隙のない知的なピアニズムを、やはり第1ヴァイオリンのボスコフスキー以下の弦が、ウィーン風のしなやかな奏法と響きで、心から尊重するかのように歌い奏し合う優雅なアンサンブルに、独自の風格を作り出している。

そして表情の移り変わりへの感受性豊かな対応、スケルツォ楽章は魔法のような色彩変化の連続だ。

ウィーン・フィルの首席メンバーのアンサンブルが演奏全体に甘美な憩いを添えた名盤であり、抗し難い吸引力で聴き手を虜にする。

各楽器の分離よりも響きのバランスを整えたロンドン/デッカ方式のこれは典型的録音の1つ。

ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング



フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室



classicalmusic at 20:44コメント(0)トラックバック(0)シューベルト | ドヴォルザーク 

トラックバックURL

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
メルマガ登録・解除
 

Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

Categories
Archives
Recent Comments
記事検索
  • ライブドアブログ