2015年06月21日

アシュケナージのラフマニノフ:前奏曲集


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アシュケナージの体質に最も合うラフマニノフの、それも名盤中の名盤で、現代最高のラフマニノフ弾きを象徴する最高の録音である。

ホロヴィッツ以降ラフマニノフをこれだけ聴かせる人は彼ぐらいだろう。

もちろんリヒテルの豪快で弾き跳ばすような演奏も、捨て難く素晴らしいが、繊細で表現豊かなアシュケナージの演奏は、優るとも劣らない。

ラフマニノフの前奏曲集はアシュケナージの最も得意なレパートリーの1つであり、ロシア出身の名ピアニストであったラフマニノフのピアニズムを生かしきった、アシュケナージの共感あふれる名演。

スラヴの体臭を消さず、その上に知的にコントロールされた音楽をブレンドした名人ならではの芸が聴ける。

アシュケナージについては、一部評論家の間では、厳しさがないとか甘口であるとか芳しくない批評がなされている。

確かに、最近、エクストンに録音したシベリウスやエルガーの交響曲などを聴いていると、そのような批評もあながち不当なものとは言い切れない気もする。

しかし、ラフマニノフの交響曲やピアノ協奏曲を指揮したり、ピアノ協奏曲やピアノ独奏曲を演奏する限りにおいては、アシュケナージは堂々たる大芸術家に変貌する。

本盤の前奏曲集も、卓越した技量の下、力強い打鍵からラフマニノフ特有の憂愁に満ち溢れた繊細な抒情に至るまで、緩急自在のテンポを駆使した圧倒的な名演を成し遂げている。

アシュケナージは、多彩な響きと表現、高度な技巧が要求されるラフマニノフの前奏曲集を完璧に再現している。

ただ陰鬱なのとも、叙情的なのとも違う、伝えたいけれど言葉にならないような叫びを音に綴ったラフマニノフ。

亡命し、死ぬまで故国ロシアへの望郷の念を抱き続けたラフマニノフの音楽に、時代背景は異なるものの、同じく亡命を経験したアシュケナージは深く共感を覚えるのだろう。

逆に言えば、作品への深い共感と愛着がないと、本盤のような血の通った超名演を成し遂げることは出来なかったと言うべきだろう。

その柔らかなタッチは至福の極地であり、さまざまな苦難を乗り越えてきたアシュケナージだからこそ出せる「味」が感じられる。

色彩と陰影の織り成す、アシュケナージの真骨頂と言える演奏で、ひとつひとつの音が微妙に絡み合って心に染み入ってくる感覚は最上のものである。

当盤は発売時、吉田秀和氏が「ここ最近聴いた中でもっとも美しいアルバム」と語ったもので、前奏曲集のなかでももっともスタンダードに相応しい演奏と言えよう。

ラフマニノフに特に大きな尊敬の念を抱いているアシュケナージにとって、ラフマニノフのピアノ作品を録音することには、とりわけ意味があると思われる。

哲学的な細部にこだわりすぎず、曲全体の有機的統一感を重んじるアシュケナージの演奏は、聴く者がどれだけ幸せになれるかを熟慮しながら弾いていると感じられる。

近年リサイタルを開かないのも、そのためであろう。

酷使された手は、もしかすると、リサイタルにはきびしいのかもしれない。

わずかなミスで聴く者に満足感を与えられないのだとしたら、リサイタルを開かないことは、アシュケナージ自身のプロ意識なのかもしれない。

しかし、こうしてディスクを通して彼の演奏に触れることができるのは、ファンにとってはうれしい限りである。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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