2015年03月18日

ドラティ&フィルハーモニア・フンガリカのハイドン:交響曲全集


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畏れ多くも史上初のハイドン交響曲全集であるが、まずは、この偉業に頭を垂れなければならない。

全104曲、輸入盤CDにして33枚(国内盤は36枚で売られていた)の大プロジェクトである。

初出のLP時代には、なんと46枚の大全集であり、ベームのモーツァルト交響曲全集LP15枚(現行CD10枚)を大きく凌駕する。

この企画を通した英デッカとしても、ショルティによるワーグナー「ニーベルングの指環」以来の大英断だったに違いない。

1969年から72年にかけての録音と言うと、カラヤンやベームの壮年期であり、クラシック・レコードに最も活気のあった頃である。

機械化が進んだため、質的には手作りの1950年代から60年代初頭より劣っていたにせよ、こうした大きな企画が通るには絶好のタイミングだったのかも知れない。

アナログ・レコードの制作は、録音からプレスまで、CDよりも数倍、数十倍のコストがかかるため、セールスの目処の立たない企画は成り立ちにくかったからである。

その意味でも、ドラティのハイドン交響曲全集は意義のある企画だった。

個別の曲で言えば、より優れたものもあるが、この全集のおかげで発見できたことがとても多いのだ。

演奏には中庸の魅力があり、小編成のフィルハーモニア・フンガリカによる溌剌とした演奏が小気味良い。

フィルハーモニア・フンガリカは1956年のハンガリア動乱によって移住した音楽家を集めて1957年に結成されたとのことであるが、その演奏水準の高さはトップランクだ。

ハンガリアン・ファミリーの1人、ドラティとの相性は言うまでもなく抜群で、室内楽的なアンサンブル、透明度の高い音色はハイドンにとても良くマッチしている。

フレージングはいつも新鮮、リズムも躍動しており、史上初の全集としての役割は十二分に果たしている。

ドラティの演奏の精巧さはライナーやセルらに共通するもので、このグループの指揮者の実力には改めて驚かされる。

余分なものも足りないものもない、古典的格調に満ちた演奏で、エディションはランドン版。

古楽器演奏とは一味違う表情の豊かさが魅力で、神経質なところがないので、ハイドンの交響曲の持つ伸びやかさを満喫することができる。

このハイドン全集は、英デッカがハンガリーとの関係が深かったがゆえに実現した企画とのことだが、移住者にとっては経済的にも干天の慈雨であったかも知れない。

強いて欠点を挙げるなら、あまりにも短時間で全曲を録音した結果、「一丁上がり!」的な粗雑な演奏も混在していることである。

普通なら録り直すであろうピッチやアンサンブルの乱れにも無頓着なところがある。

箱や袋からわざわざ盤を取り出すLPと違って、扱いのお手軽なCD時代になり、これまで滅多に聴かなかった初期や中期の作品を耳にするようになって、そうした粗が余計に目立って聴こえるようになったのかも知れない。

とはいえ、かつて国内盤CDで6万円以上していた当セットも、いまは半額くらいで手に入るので、手元に置いて、後悔することはなかろう。

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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