2015年06月24日

ワルター&フランス国立放送管のモーツァルト(1956年ライヴ)


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1956年6月14日、引退直前のワルターがフランス国立放送管弦楽団へ客演した際の放送用ライヴ録音。

ワルターが録音した「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」の中で、音色や雰囲気の点で、最もロマンティックなのはウィーン盤であるが、解釈自体としていちばんロマン的なのは、この演奏である。

ワルターは慣れないフランスのオケに徹底して自分の解釈をたたきこみ、ときには強引に引っ張ってゆく。

音色こそ乾いて明るいフランス調だが、響きは豊かで厚みに満ち、第1楽章における大きなテンポの動き、第4楽章の極めて遅い運びなど、ワルターのどのレコードよりも著しく、モーツァルトのあふれんばかりの歌とワルター節とを心ゆくまで堪能できる。

従って、ワルターのモーツァルトに疑問を持つ人には最も嫌われる演奏と言えるのかも知れない。

第2楽章のたっぷりとしたカンタービレ、ワルターとしてはやや速めで、音楽に勢いのあるメヌエットもそれぞれ素晴らしく、録音もややドライだが、生々しく採れている。

逆に「フリーメーソンのための葬送音楽」は、2つのコロンビア盤に比して、かなり落ちる。

楽器の分離がやや悪く、旋律線のくっきりしない録音のせいもあるのだろう。

「リンツ」もオーケストラがワルターの指揮ぶりに慣れていないせいか、2つのコロンビア盤との録音よりも、ワルターのロマンティックな表情が強調されて表われており、それがファンにとってはたまらない魅力となる。

第1楽章に頻出するテンポの動きと思い切ったカンタービレは現代の指揮者からは絶対に聴けないし、第2楽章も音楽に対するワルターの愛情や共感がほとばしり出ている。

ワルターは常に「ここはこういう音楽なんだよ」と語りかけるのである。

フィナーレ結尾のアッチェレランドをかけた情熱的な高揚はいつもながらのワルターだ。

第39番は2つのニューヨーク盤ほどのスケールの大きさや豊かな響きには乏しいが、初めの2つの楽章には、完成度が低いからこそ、ワルターの考えがはっきり伝わってくる面白さがある。

第1楽章の導入部からして、がっしりとした大建築物を仰ぎ見るような表現で、翳の濃さや響きの分厚さとともにベートーヴェンを想わせる。

主部に入ると、金管やティンパニがモーツァルト演奏の常識を破って(モーツァルトにおけるこれらの楽器は、フォルテの指定でも指揮者の要求がなければメゾ・フォルテで演奏される)強奏強打され、あふれるような歌に満ち、テンポが大きく変化されて、いわゆる爽やかさやデリカシーといった、モーツァルトの典型的な解釈を求める人には大いに抵抗のある表現が展開される。

コーダの急速な追い込みなど、まさに息詰まるような迫力と言えるところであり、休符の長い間や洒落たテヌートも昔のSPそのままである。

厚みのあるカンタービレがほとばしるようなアンダンテ、情熱的と言いたいくらい思い切ったアクセントを持ったメヌエット、いずれも速めのテンポながら一分の隙もない緊張感を保ちながら進められるが、フィナーレにいたっては、ワルター絶好調の名人芸であろう。

雄大な造型と、めくるめくような迫力と、厚く輝かしい響きを備えながら、同時に比類のない繊細さとアンサンブルの冴えを聴かせ、テーマには微妙な間さえ現われるが、その魅力が何とも言えない。

しかもこの壮麗を極めた演奏は、外側からつけ加えられたものではなく、ワルターの内部から湧き上がった力によっているのだ。

すなわちこれらのロマンティックな表情や迫力が、いささかの人工臭を残さないまでに、昇華されつくしたのである。

慣れないオケをここまで操り、自信にあふれて新しいモーツァルト像を打ち立てたワルターに心から敬意を表したい。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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