2015年04月21日
アシュケナージ&ハイティンクのラフマニノフ:ピアノ協奏曲全集
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アシュケナージは、プレヴィン指揮のロンドン交響楽団ともラフマニノフのピアノ協奏曲全集を完成していたが、15年後のこの演奏には、この間のアシュケナージの豊かな経験が余すところなく示されている。
指揮者としても交響曲全集を完成するなど、ラフマニノフの音楽に強い愛着と自信をもつアシュケナージの作品に対する熱い共感が、いっそう味わい美しく歌われていると言って良いだろう。
プレヴィンとの前作も、この協奏曲のロシア的な情感を若々しい感覚で陰翳美しく表現していたが、この演奏は、音も表現もさらに幅広く柔軟に磨き抜かれているし、すばらしく洗練された多彩なタッチによって、ラフマニノフの音楽を精妙に、かつしなやかな強さをもって彫りなしている。
アシュケナージはスケールの大きな技法で、ラフマニノフの旋律を朗々と歌い上げて見事というほかはなく、その美しく深い味わいは、やはり40代後半という円熟期のアシュケナージならではのものである。
またアシュケナージ自身祖国へのノスタルジアを込めたかのように、憧れに満ちたかのような独特の粘り気のあるフレージングで、分厚く積み重なった和音を叩き出している。
ことに第2番は秀演、力演ひしめく中で、本演奏はいつ聴いてもすばらしく、大きな充実感と新鮮な感動をもたらしてくれる。
独自の爽やかなロマンティシズムと豊かな音楽性が全編に溢れ、どこまでも屈託のないしなやかなラフマニノフの世界を繰り広げている感。
量感もあり、木管楽器との絡み合いには極上のリリシズムが漂う。
アシュケナージは純粋にピアノという楽器でものを言える数少ない1人であろう。
また、本物のロマンとは知的なものなのである。
それにしても何てゆったりとした大きなうたなのだろう。
このこぼれんばかりの情緒を湛えた第2番の協奏曲以上に、磨き抜かれた、厳しい美しさを誇る第3番の協奏曲は、意外に名盤が少ない。
そんな中で、常に最高の位置を占めてきた名盤が、既にこの協奏曲を4回も録音しているアシュケナージだ。
実に4度目となるこの録音でも、輝かしく、また張りと潤いに溢れたピアノの音色も魅力的だが、アシュケナージの演奏には、聴き手を作品の世界に嫌がうえにも導き入れて陶酔させてしまうドラマティックな吸引力があるし、抒情的味わいも一段と濃く、深く、しかも演奏全体が暖かい点が素晴らしい。
オーケストラとの間に醸される充実した空気が何よりも魅力的だし、アシュケナージがこの曲を完全に手中にし、余裕と豊かなニュアンス表現のうちに振幅の大きいソロを聴かせている点も見逃せない。
第1番と第4番も、十全の円熟味と安定感を示した秀演と言って良いだろう。
それにハイティンクとコンセルトヘボウ管弦楽団がそうしたソロを手厚く支えて、演奏をいっそう充実したものにしている。
ハイティンクの指揮も、アシュケナージに劣らずスケールが大きく、シンフォニックに作品のオーケストラ・パートを歌わせている。
そして英デッカならではの録音の優秀さも、このCDの大きな特色で、アシュケナージとハイティンクの演奏をよりリアルに、引き立てていると言えよう。
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