2015年03月24日
フルトヴェングラー&ルツェルン祝祭管のベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」、他
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このCDのメインは、ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」で、1953年8月26日のルツェルン音楽祭での演奏のライヴ録音である(フルトヴェングラーの同曲の最後の録音となったもの)。
これは、ラジオ放送を録音したもの(いわゆるエアチェック)なので音の状態は十分ではないものの、演奏は素晴らしい。
フルトヴェングラーの指揮する「エロイカ」は、極めて高い見識を持った優れた解釈を下地にしており、残されたすべての演奏が格別の名演である。
ここでの演奏は、時期的に近接している1952年11月30日のウィーン・フィルとの演奏とごく近いものだが、物腰の柔らかいウィーン・フィルと違い、ルツェルン祝祭管弦楽団(スイス・ロマンド管弦楽団の団員などから構成されているという)の素直な反応がフルトヴェングラーにウィーンでの演奏よりも少しばかり動的かつ情熱的な演奏を促したのも知れない。
第1楽章は物凄い気迫で開始され、最初の和音だけとれば、これが今までのベストと言えよう。
そして続く主題の足どりはゆったりとして実に良い雰囲気であり、堂々としてスケール雄大、ひびきが満ちあふれる。
オーケストラが指揮者に慣れていない感じで、それがフレッシュな感動を生み出す原因の1つになっているのだろう。
指揮者の棒は1952年のスタジオ録音以上に力みがないが、音の背後の凄絶さはまさに最高、常に立派な充実感に満たされている。
テンポの動きは再現部の前と直後に1度ずつあるだけで、後は安定しきっており、最晩年の確立した大演奏と言えよう。
第2楽章は心はこもっているが流れを失わず、旋律はソロといい合奏といい、肉のり厚く歌われ、中間部から再現部のフガート、その後の阿鼻叫喚に至るまで、他のどの盤に比べても仕掛けはないが、それでいて物足りなくないのは偉とすべきであろう。
この楽章は、深く悲しみに沈み込むような1952年12月8日のベルリン・フィルとの演奏より2分も短い。
お互い相手を知りぬいた組み合わせとは異なった、一期一会の感興がこの演奏の大きな魅力となっている。
スケルツォからフィナーレにかけても同じスタイルだが、後者に入ると音質がだんだん濁ってくるのが残念だ。
しかし、少しも速くならないフーガといい、ポコ・アンダンテといい、コーダといい、音の後ろに凄いものが隠されており、充分満足させてくれるのが素晴らしい。
このCDには余白を埋めるものとして、さらに2つのルツェルン音楽祭での録音が収録されている。
1つは1954年8月22日のベートーヴェンの交響曲第9番、その終楽章の最後7分余り。
これは最晩年のフルトヴェングラーの演奏の中でもとりわけ優れた感動的な演奏であるが、これは全曲として聴くべきものだろう。
もう1つは、1951年8月、ベートーヴェンの交響曲第7番第2楽章の練習風景である。
資料によると第2楽章の97小節から187小節までが扱われているが、フルトヴェングラーの指示は基本的に簡潔で具体的なものである。
143小節からの下降音型で、フルトヴェングラーは『重々しさ』を求め、それに応じて見事にオーケストラの演奏が変化していく様子が興味深い。
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