2015年04月11日
ジュリーニ&ウィーン・フィルのブラームス:交響曲第1番、ハイドンの主題による変奏曲
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ブラームスを得意としたジュリーニであるが、1990年代に録音されたウィーン・フィルとの全集は、いかにも晩年のジュリーニらしいゆったりとしたテンポによる堂々たる名演揃いだ。
ジュリーニは特に晩年、たっぷり時間をかけてじっくりと演奏するタイプの指揮者であったが、ウィーン・フィルも非常に歌わせるタイプのオケで、ジュリーニとの相性もぴったりなので、演奏は哀愁たっぷりの胸にジーンとくるような詩情にあふれている。
ゆったりとしたテンポによる気品のあるブラームスで、鈍重さは微塵もなく、静かな緊張感に貫かれた表現がジュリーニらしい。
本盤に収められた「第1」は、ジュリーニならではのスローなテンポではあっても、緩ませず、ブラームスの憧れたベートーヴェンの交響曲を思い描いたような、重厚さに重きを置いた解釈の演奏である。
重厚さに重きを置くといっても、そこはやはりジュリーニらしい歌うような軽やかさも忘れていない。
ジュリーニは、オケとの調和をはかりつつ、理想とするブラームスの「形」を哀愁と優しさを感じさせながら描く。
非常にゆっくりしたテンポだが、今までの総決算のような気迫に満ち、第1楽章だけでも普通の交響曲を1曲を聴いたような充実感がある。
のっけから、ううむ、と唸ってしまうほど徹底的にテンポが遅いが、決して茫洋と失速しているわけではない。
音楽を運ぶ音の動きが常に克明に捉えられて、耳が鋭敏になった上に豊かな歌がのるために、その遅さが逆にたまらなく強烈に感覚を高ぶらせる。
まさに、熟成したブランデーのような濃密な味わいだ。
冒頭の和音はソフトなフォルティッシモで開始されるが、その後はゆったりとしたテンポによる堂々たる進軍を開始する。
この進軍は主部に入っても微動だにしないが、他方、隋所に現れるブラームスならではの抒情的旋律については、これ以上は不可能なくらい美しく、かつ風格豊かに歌い上げている。
このような優美な旋律のノーブルで風格豊かな歌い方は、第2楽章や第3楽章でも同様であり、これは最晩年のジュリーニが漸く到達した至高・至純の境地と言えるだろう。
第4楽章は、再び巨象の堂々たる進軍が開始されるが、主部の名旋律の演奏の何と歌心に満ち溢れていることか。
スローテンポを基調として、ブラームスが楽譜に書き込んだもの全てを歌い切っているかのようだ。
ジュリーニの演奏を見事に支えるウィーン・フィルの重厚にして優美な演奏も素晴らしいの一言であり、この「第1」は、万人向けではないが、ジュリーニの渾身の超名演と評価したい。
ハイドンの主題による変奏曲にも同様のことが言える名演であるが、ジュリーニの持ち味であるゆっくりとした演奏でじっくり曲を作りこむ点は変わらず、晩年ならではの歌うような演奏は非常に印象に残る。
特に、第7変奏の筆舌には尽くし難い美しさは、空前にして絶後と言えるのではないだろうか。
ジュリーニの持つ明快さとウィーン・フィルのしなやかさとが相俟った、緊張感に満ちた名演だ。
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