2015年03月26日
ワルター・コンダクツ・マーラー
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往年の名指揮者ブルーノ・ワルター(Bruno Walter 1876-1962)がCBSレーベルに録音した一連のマーラー(Gustav Mahler 1860-1911)作品を7枚のCDに収録したBox-set。
LP時代に高価だった名盤が続々と安価で販売され、名演奏がきわめて身近になったが、このセットもその好例で、品質がきわめて高い。
演奏は言うまでもないが、復刻が丁寧でばらつきが少ないことが特色である。
ワルターはマーラーの弟子であり親友でもあった。
景勝地シュタインバッハで夏の休暇を楽しむマーラーを訪ねたワルターが美しい景色に見とれていると、マーラーが「それ以上眺める必要はないよ。全部私の今度の交響曲にしてしまったからね。」と言ったのは有名だ。
マーラーの死後に彼の交響曲「大地の歌」と「第9」を初演したのがワルターである。
マーラーはユダヤからカトリックに改宗したが、ワルターは終生ユダヤ人だった。
そのため、第2次世界大戦で彼は拠点をドイツからオーストリアへ、そしてアメリカへと移さざるを得なくなる。
そうして、アメリカで数々のマーラーの名録音が生まれ、それがこのアルバムだ。
もう1つ逸話を。
当時CBSはマーラーの「第1」を録音するにあたり、指揮者にバーンスタイン(Leonard Bernstein 1918-1990)を起用することも考えていて、当人も乗り気だった。
しかし、ワルターとのレコーディングが先に終了したことから、シェアの問題もあり、バーンスタインに計画の中止を申し出たが、彼は承服しなかった。
そこで、CBSのスタッフは実際に録音されたワルターの演奏をバーンスタインに聴いてもらった。
聴き終わったバーンスタインは「素晴らしい。これは彼の交響曲だ。」と延べ、自ら録音の中止を快諾したそうだ。
ワルターの音楽の価値、バーンスタインの大きな人柄など様々なことを示すエピソードだ。
ブルーノ・ワルターのこのマーラー交響曲集は本当に素晴らしい。
バーンスタインのマーラーも確かに素晴らしいが、このワルターの演奏はそれを遥かに凌駕する。
バーンスタインの解釈より、マーラーの混沌とした宇宙がよりはっきりと感じられ、遥かにロマン的であり、マーラーの心情がひしひしと伝わってきて、こちらの感情も溢れ出しそうになる。
マーラーの音楽の根底に流れているのは「うた」なんだとあらためて理解することができる。
この演奏を聴いたら、バーンスタインのみならず、他のいかなる指揮者もマーラー演奏を断念してしまうのではないかと思わずにはいられないが、それほどに素晴らしい演奏である。
ワルターの演奏は、典雅さと苛烈さがあり、その表出度のバランスが曲や演奏によって異なるのだけれども、どれも高い香りを感じさせるものだと思う。
どの交響曲も今なお名演の誉れが高いもので、特に「第1」と「第9」が素晴らしく、薫り高く、格調高く、切々と歌い上げている。
筆者が初めて「第2」を聴いたのがこのワルターの劇的な演奏であったが、懐かしいし、現代でも通じるシャープな迫力に満ちている。
また「大地の歌」は1952年のウィーン・フィルとの名盤が名高いが、こちらも味わいのある演奏だと思う。
いずれにしても、半世紀を過ぎた今でも、多くの人に愛聴される歴史的録音だろう。
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