2015年03月22日

ショルティ&ウィーン・フィルのR.シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」、他


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《英雄の生涯》は、カラヤン&ベルリン・フィルによる複数の録音が世評が高いし、筆者も好きでよく聴く。

しかし「《英雄の生涯》のユニークな演奏を1つ選べ」と言われたら、ショルティ&ウィーン・フィル盤なのである。

ショルティとウィーン・フィルは、決して相性のよいコンビでなかったと聞く。

確かに音楽性は相反する感じなので、反目することがあったのは当然と思えるが、ショルティとウィーン・フィルが遺した演奏には、両者の長所が融合し合った幸せな音楽の瞬間が多々ある。

本盤でも、速めのテンポで、アグレッシヴに指揮するショルティだが、そこはさすがにウィーン・フィル、音色には潤いがあり、リズムにもうねるようなしなやかさがある。

ショルティのエネルギッシュなアプローチを見事に受けとめて、素晴らしい音楽に仕上げている。

冒頭の「英雄」は、雄渾さとしなやかさでもって、快速のテンポで突き進み、それは、まさに向かうところ敵なしといった感じ。

ショルティの力んだ棒が見えるような溌剌さがあり、何となくアンサンブルがルーズだが集中力がある。

「英雄の敵」に入っても、テンポにはいささかの緩みも見られず、ウィーン・フィルの木管群が憎々しく卑小な英雄の敵たちを描き出す。

「英雄の妻」では一転してテンポを落とすが、名手ライナー・キュッヒルの美音ソロが聴き所で、ここのキュッヒルのソロの実に美しいこと。

「英雄の戦場」は、いかにもショルティらしく圧倒的な音量でオーケストラを豪快にならすが、その凄まじさには戦懐を覚えるほどで、凄絶な戦いを描くウィーン・フィルの金管群・打楽器群・弦楽器群、バスドラムの刻む変則的な4連符が凄まじい。

「英雄の業績」は、そっけなさを感じるほどの快速のインテンポ。

「英雄の引退と完成」は、再びテンポを落として、演奏全体を雄大に締めくくっている。

この「英雄の業績」から「英雄の引退と完成」にかけての寂寥感に満ちた音楽は、45分程度の曲なのに自分の生涯が終わりを迎えるかのような寂しさに包まれる。

ショルティは、一部批評家から、無機的なインテンポの指揮者と酷評されているが、本盤のような演奏に接すると、決してそうではなく、むしろ緩急自在のテンポを駆使した起伏の激しい演奏をしていることがよくわかる。

本演奏を名演と言えるかどうかは、ウィーン・フィルとの相性などを考慮するといささか躊躇するが、ショルティの個性が溢れたユニークさという点では、一聴の価値は十分にある演奏であると考える。

世評は高くないかも知れないが、剛毅さ・艶麗さ・凄絶さ・そして黄昏の美といった、この曲の持つ魅力を十全に引き出した名演と言えるだろう。

むしろ、併録のワーグナーは、解釈に奥行きが出てきたと評された1980年代後半の録音であり、ショルティ円熟の名演と言ってもいいと思われるが、もう少し大きな音楽の流れを聴きたいような気もする。

SHM−CD化の音質向上効果は、従来CDの音質もかなりのものであったことから、若干のレベルにとどまっている。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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