2015年03月26日
ボレットのリスト:ピアノ名曲集
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“ピアノの魔術師”と呼ばれたリスト珠玉のピアノ曲ばかりを集めた名曲集で、演奏しているのはリスト弾きとして人気を博した巨匠ホルヘ・ボレット。
リストの直系の孫弟子と言われているボレット特有の優しく、そして微妙な強弱の駆け引きに長けた名演奏が存分に味わうことのできる、リストを聴くに打ってつけのアルバムである。
音の魔術師と言われたリストの音楽の魅力が、ボレットの確実な技巧で余す所無く表現されていると名盤と言えるだろう。
言うまでもなく、リストはショパンと並んで、ロマン派を代表するピアニストであり、ピアノ曲を数多く作曲した大芸術家であるが、これは気のせいかもしれないが、古今東西のピアニストでも、いわゆるショパン弾きに対して、リスト弾きというのは決して多いとは言えないのではないだろうか。
リスト弾きで頭に浮かぶのは、大物ではシフラ、ボレット、アラウ、ベルマンと言ったところか。
ボレットは、異論はあろうが、筆者としては、このリスト弾きの巨匠の中でも、比較的癖の少ないオーソドックスな演奏をしているのではないかと考えている。
本盤は、リストのピアノ作品の中でも有名な小品を収めており、リスト弾きとしてオーソドックスなボレットの芸風を知る上でもベストの選曲となっている。
「鬼火」や「狩り」の力強い打鍵、「ペトラルカのソネット」、「ため息」、「コンソレーション」、「愛の夢」の繊細な抒情、「メフィスト・ワルツ」や「タランテラ」のリズミカルな舞踊、そして超有名な「ラ・カンパネラ」の超絶的な技巧など、リストのピアノ曲の多種多彩な魅力を存分に満喫させてくれる。
ピアニストにとっては、高度で超絶的テクニックを必要とする曲群であるが、ボレットはテクニック偏重を感じさせず、理屈をこねるよりも、もっと素直に単純に聴き手を楽しませる。
リスト弾きのボレットならではの勘どころを押さえた演奏となっていて、テクニックだけで押しまくる今どきのピアニストとは違ってしっとりとしたスケールの大きい演奏を聴かせてくれる。
その美しい高旋律や魔術的な技巧、ボレットはすべての曲において正しい解釈をしてくれていると言えよう。
ボレットのピアノの音は優しくて温かみがあるので、聴いていて疲れない。
技巧的なリストの曲をこうも内容の濃いものに仕上げてしまったボレットの腕には感嘆する。
ボレットのピアノは、テンポはやや遅めであるが、1音1音に濁りがなく、丁寧に演奏されている印象があり、音の輪郭をはっきりさせるところと曖昧なところなど非常に細やかな表現をしている。
また、ベヒシュタインの透明感ある音色の美しさが非常に楽しめる、リストのピアノ名曲集としての価値も高い。
ボレットの名をすでに知っている者も、知らない人も、ここでの演奏は彼の特質を表しており、技巧や激しさよりも作品本来の美しさに出会うことができる。
ボレットは超絶技巧を要する曲でも柔らかいタッチでまとめ上げていて、ベルマンの荒々しい演奏や、アラウの切れのある演奏、アシュケナージのコンピューターのような演奏と比べてみるのも一興ではないだろうか。
ボレットの演奏はひょっとするとあまり日本人好みではない演奏なのかもしれないが、フジコ・ヘミングが評価されるようになった昨今、ボレットの演奏を聴いてみるのも良いかもしれない。
そのきらめくような、まさにブリリアントと表現するのが一番しっくりくる演奏は、まさに“リストの曲”といった感じだ。
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