2015年05月23日

カラヤン&ベルリン・フィルのニールセン:交響曲第4番「不滅」


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カラヤンの長く、広いレコーディング・レパートリーにおいて、生涯ただ1度だけ取り上げたニールセンの作品、それがこの交響曲第4番《不滅》である。

しかし、北欧の音楽に無縁というよりは、シベリウスやグリーグに極めて優れた演奏を聴かせていたことを思えば、カラヤンがニールセンをとりあげたことに何の不思議はない。

むしろ、シベリウスやグリーグに比べると知名度が必ずしも高くないニールセンを1981年にとりあげて録音していたカラヤンの慧眼に感服させられる。

リチャード・オズボーン著の伝記によると、カラヤンがこの曲を録音に選んだのは「第一次世界大戦とその恐るべき遺産に関連していたため」だったという。

また、作曲家自身の発言では「音楽のみが完全に表現しうるもの━━生への根源的な意志」がこの曲のテーマであり、カラヤンがそのテーマに深く共感したのだそうだ。

演奏は、例によって流麗にして豪華、深く広大な息づかいを感じさせ、それでいて力感も不足しておらず、スケールも大きい。

カラヤンの耽美主義的な表現は、総じて遅めのテンポで扱った根本的なアプローチのありかたに強く反映している。

冒頭の対照的な主題でカラヤンが特に意識的にコントラストを与えるようなアクセントづけを行っているところにも明白であるが、その後の進行の曲折のありようをカラヤンほど微細な処置というか、細部拡大主義というか、精密に扱った指揮者を知らない。

ニールセンの6曲の中で特にレコードの数が多いのが第4番の《不滅》であるが、多くの指揮者がニールセン的変化を直線的に扱っているのに対して、カラヤンはエモーションの内面的なものをかつてどの指揮者からも聴かれなかったほど透かし彫りのように浮き上がらせる。

そのいちばん目立った例は、アダージョの静寂たる佇まいの中に込められた内的情熱の沈潜である。

カラヤンのピアニッシモのコントロールの絶妙さは改めて贅言を要するまでもないところだが、《不滅》という暗示的な標題が生命と同じような音楽の永遠性の息吹きを伝えることをモットーに打ち出したニールセンの意図は、カラヤンによってこの上もなく見事に実現されているのである。

ベルリン・フィルの弦がまさに、虹を描くように次々と鮮やかな音色を聴かせ、カラヤンが壮大でダイナミックにまとめている。

素朴さ、土臭さに欠けるという指摘もされたそうだが、カラヤンにそうした要素を求めるのは文字通り「無い物ねだり」であろう。

デンマークでは「日曜日の晴れ着を着た農夫」と評され、日本でも、当時のレコード芸術では、小石氏の推薦評価は貰ったものの、もう1人の評者である大木氏からは「ベルリン・フィルの大運動場」と酷評された演奏である。

しかし、ニールセンはデンマークのローカルな作曲家ではない。

それどころか、シベリウスと並ぶ20世紀の大交響曲作曲家であり、カラヤンは、圧倒的な統率力でベルリン・フィルの技量を最大限に発揮させて、ニールセンの傑作交響曲を等身大に演奏したのに過ぎない。

録音当時のカラヤンは、相当に体力が衰えていたというが、冒頭から、そうとは到底思えないような生命力に満ち溢れた演奏を繰り広げており、筆者はこの演奏を聴いて、ニールセンの音楽の可能性を感じ取ることができた。

第2部の北欧的抒情も実に美しく、第3部の弦楽合奏の重量感もベルリン・フィルならではのもので、第4部の終結部のティンパ二の連打の圧倒的な大迫力。

前述のように、ニールセンを北欧のローカルな作曲家と看做す者からは素朴さを欠くとの批判も予測されるが、筆者としては、ニールセンを国際的な大交響曲作曲家としての認知に導くことに貢献した大名演であると評価したい。

音質はもともと抜群に優れていたが、SHM−CD化により更に目覚ましく向上している。

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classicalmusic at 00:23コメント(0)カラヤン | ニールセン 

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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