2015年05月31日
ケンペ&ミュンヘン・フィルのブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」、第5番
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ケンペ&ミュンヘン・フィルという往年の名コンビによるブルックナー録音は、本盤に収められた2曲しか遺されていないが、特に「第5」が歴史に残る素晴らしい名演だ。
ブルックナーの「第5」と言えば、シューリヒト&ウィーン・フィル盤とヴァント&ベルリン・フィル盤が、最も手応えのあったものと言えるところだ。
しかし、シューリヒトを聴いていると、ちょっと指揮者の個性が出すぎてやしまいかと、そんなことが頭をチラッとよぎる。
かたやヴァントの方は、あまりにも洗練されすぎてやしまいか、などと贅沢な不満を覚えたりする。
つまり、この2種類とは少し毛色の違った名演も欲しいのだ(なんと欲ばりなこと)。
このケンペは雄大でありながら、質朴、渋さの極みで、部分的には明らかに先の2種類よりは曲想にふさわしいと思えるし、聴いていてケンペならではの独自の音づくりには静かな感銘を受けるところである。
これぞドイツ的な音の渋さ、くすみ、幾分の暗さが微妙にブレンドされていて、全くぶれず程良い一定のテンポで持続してゆく。
全体の印象は、ヴァントと同様、いわゆる職人肌の指揮ぶりであるが、ヴァントのような超凝縮型の眼光紙背に徹した厳しさをも感じさせるものではなく、より伸びやかで大らかな印象を受ける。
それどころか、冒頭のゆったりとした導入部や、第2楽章の美しい旋律の調べなど、決してインテンポに拘泥することなく、緩急自在のテンポ設定を行っているが、全体の造型はいささかも弛緩することはない。
終楽章の複雑なフーガもきわめて整然としたものに聴こえる。
これは、ケンぺがブルックナーの本質をしっかりと捉えていたからにほかならない。
ブルックナーのこの曲への複雑な感情表出が、陰影を感じさせる深い響きから浮かび上がってくるのである。
ほぼ同時期に、同じ職人タイプのベームが「第4」の名演を残しているが、ケンぺの本盤の演奏とは全く異なるものになっているのは大変興味深い。
もちろんオーケストラも異なるし、ホールもレーベルも異なるが、それ以上に、ケンぺは、ベームのようにインテンポで、しかも自然体の演奏をするのではなく、金管、特にトランペットに、無機的になる寸前に至るほどの最強奏をさせたり、テンポを随所で微妙に変化させるなど、ケンぺならではの個性的な演奏を行っている。
筆者としては、「第5」の方をより評価したいが、この「第4」も、同じタイプのベームの名演によって、一般的な評価においても不利な立場にはおかれていると思われるが、高次元の名演であることは疑いのないところである。
当時のミュンヘン・フィルは,チェリビダッケ時代以後のような超一流のアンサンブルには達しておらず、管楽器群の独奏などあまり洗練されていないが、ローカル色の濃いオケの健闘ぶりもまた聴きものである。
両盤ともに以前はXRCD盤が発売されていたが、今は廃盤となってしまったので、次善策としてネットメディア配信で聴かれることをお薦めしたい。
筆者としては、パッケージメディアがどんどん衰退していくのは、寂しい気もするが、ネットメディアの方が安価で購入できるし、これも時代の流れなので、致し方ないと考えているところである。
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コメント一覧
1. Posted by Kasshini 2015年11月18日 12:33
ケンペつながりで、こちらに書きます。
先日、コルンゴルト 交響曲嬰へ調のケンペ指揮ミュンヒェンフィルで聴きました。
両翼配置で、弦楽器の聴き合いが聴けることもさることながら、見通しよくリズミカルな印象で、マルク・アルブレヒト指揮シュトラスブルクフィルよりも好ましく感じました。作曲者のコルンゴルト自身は、ブルーノ・ヴァルターの指揮が最もお気に入りとのことで。
このケンペの演奏で最も魅力的に感じたのは、そのローカリズムを言えばいいでしょうか。南ドイツ圏らしい、明るくまろやかで野趣味のある音色。第4楽章を筆頭に、アインザッツを意図的にずらしているところがあるのは、気のせいでしょうか。不快にならない独特なよれは、かつてのヴィーンフィルの味に似た心地良さを感じます。プレヴィン盤、メスト盤も購入予定ですが、蘇演者でもあり、Amazon英米独で評価が最も高いのも納得で。もしプレヴィン盤、メスト盤ともども聴いたことがあれば、感想をお聞かせ下さい。早世が悔やまれますね。
先日、コルンゴルト 交響曲嬰へ調のケンペ指揮ミュンヒェンフィルで聴きました。
両翼配置で、弦楽器の聴き合いが聴けることもさることながら、見通しよくリズミカルな印象で、マルク・アルブレヒト指揮シュトラスブルクフィルよりも好ましく感じました。作曲者のコルンゴルト自身は、ブルーノ・ヴァルターの指揮が最もお気に入りとのことで。
このケンペの演奏で最も魅力的に感じたのは、そのローカリズムを言えばいいでしょうか。南ドイツ圏らしい、明るくまろやかで野趣味のある音色。第4楽章を筆頭に、アインザッツを意図的にずらしているところがあるのは、気のせいでしょうか。不快にならない独特なよれは、かつてのヴィーンフィルの味に似た心地良さを感じます。プレヴィン盤、メスト盤も購入予定ですが、蘇演者でもあり、Amazon英米独で評価が最も高いのも納得で。もしプレヴィン盤、メスト盤ともども聴いたことがあれば、感想をお聞かせ下さい。早世が悔やまれますね。
2. Posted by 和田 2015年12月04日 13:44
未聴なので、コメントは差し控えさせていただきます。