2015年05月09日
プレヴィン&ロイヤル・フィルのホルスト:組曲「惑星」
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ホルストの組曲「惑星」を、プレヴィンは2度にわたってスタジオ録音している。
最初の録音がロンドン交響楽団との演奏(1973年)、そして2度目の録音が本盤に収められたロイヤル・フィルとの演奏(1986年)であるが、いずれ劣らぬ名演と評価したい。
それにしても、本演奏は素晴らしい。
何が素晴らしいかと言うと、とにかく奇を衒ったところがなく、組曲「惑星」の魅力を指揮者の恣意的な解釈に邪魔されることなく、聴き手がダイレクトに味わうことが可能であるという点であると考える。
同曲はあまりにもポピュラーであるため、個性的な解釈を施す指揮者も多く存在しているが、本演奏に接すると、あたかも故郷に帰省してきたような安定した気分になるとも言えるところだ。
プレヴィンは、クラシック音楽の指揮者としてもきわめて有能ではあるが、それ以外のジャンルの多種多様な音楽も手掛ける万能型のミュージシャンと言える。
それ故にこそ、本演奏のようなオーソドックスなアプローチをすることに繋がっていると言えるだろう。
プレヴィンはこの曲をスペクタクルにせず、それまでになかった都会的な洗練された優雅さを感じさせる。
楽曲を難しく解釈して峻厳なアプローチを行うなどということとは全く無縁であり、楽曲をいかにわかりやすく、そして親しみやすく聴き手に伝えることができるのかに腐心しているように思われる。
したがって、ベートーヴェンなどのように、音楽の内容の精神的な深みへの追求が必要とされる楽曲においては、いささか浅薄な演奏との誹りは免れないと思うが、起承転結がはっきりとした標題音楽的な楽曲では、俄然その実力を発揮することになる。
組曲「惑星」も、そうしたプレヴィンの資質に見事に合致する楽曲と言えるところであり、加えて、プレヴィン円熟のタクトも相俟って、素晴らしい名演に仕上がったと言っても過言ではあるまい。
聴かせどころのツボを心得た演出巧者ぶりは心憎いばかりであり、プレヴィンの豊かな音楽性が本演奏では大いにプラスに働いている。
確かに、イギリスには作曲者による自作自演盤を筆頭に、ボールト盤、サージェント盤など名盤の歴史があり、それらはスペクタクルにはいささかも傾くことなく、表現の奥ゆかしさ、自然に醸し出される味わいの豊かさなどの点で、作品との特別な連帯感、一体感を堪能させてきたが、プレヴィンはそこに新しい筆を持ちこみ、タッチも、輪郭も、色彩も、より鮮やかで初々しい《惑星》像を再現して、伝統を一歩先へと推し進めたように思われる。
クラシック音楽入門者が、組曲「惑星」を初めて聴くに際して、最も安心して推薦できる演奏と言えるところであり、本演奏を聴いて、同曲が嫌いになる聴き手など、まずはいないのではないだろうか。
ロイヤル・フィルも、常にこの曲を弾きこんでいるせいか、たいへんうまい。
この精緻な味わいは他のディスクではなかなか味わうことが出来ないので、是非一聴をお薦めしたい1枚である。
いずれにしても、本演奏は、プレヴィンによる素晴らしい名演であり、同曲を初めて聴く入門者には、第一に推薦したい名演であると評価したい。
テラークの優秀録音も本盤の価値を高めるのに貢献しており、安心して万人に推薦できる名盤である。
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