2015年04月15日
ベーム&ウィーン・フィルのブルックナー:交響曲第7番
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何故か長らく廃盤の憂き目にあっていた名盤の待望の復活である。
ブルックナー的という概念にとらわれない純音楽的ブルックナーであり、ベームの人柄がそのまま出ている生真面目な演奏であるが、堅苦しくならず、角の立たない優しさに溢れている。
この作品のもつ構成的な美しさをよくあらわした演奏で、淡々と音楽を運びながらも、ベームの強い意志が貫かれている。
この作曲者としては例外的に「歌謡的」なこの交響曲を、あくまで自然に、また悠然とウィーン・フィルと歌い上げていく。
ベームは、作為の無い素直な解釈であり、アゴーギク、デュナーミクも抑制的であるが、かと言ってストイックな演奏ではなく、ウィーン・フィルの合奏能力を確信して、余り締めつけずに悠々と振っている。
特に、テンポを微妙に動かしながら、明暗の度合いをくっきりと打ち出した第1楽章は、出だしのチェロの第1主題の歌わせ方から、その特徴が出ている。
息の長い旋律線を弦が歌い上げるとき、あたかも輝かしい光と熱が音から放射されるように感じられる。
ベームは職人芸の指揮者とよく言われ、ドイツ系の交響曲の緩やかな楽章を注意深く聴いてみるとわかるが、カラヤンのような、耽美的な味わいが薄いだけで、いつも豊かな歌に満ちていることがわかる。
その後も厚みのある弦楽器の音色を生かしてゆったりと表現した第2楽章、一分の隙もなく金管楽器を壮麗に鳴らした第3楽章、ロマン的な雰囲気を柔らかに表出した第4楽章、ウィーン・フィルの豊かな響きとともに、ベームの音楽設計が光る。
ところでベームは、ブルックナーの交響曲をすべて演奏しているわけではなく、遺された録音などを勘案すると、演奏を行ったのは第3番、第4番、第5番、第7番及び第8番の5曲に限られているものと思われる。
これ以外にも若干のライヴ録音が存在しているが、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、ブラームスの各交響曲全集を録音した指揮者としては、必ずしも数多いとは言えないのではないかと考えられる。
この中でも、文句なしに素晴らしい名演は1970年代前半にウィーン・フィルを指揮して英デッカにスタジオ録音を行った第3番(1970年)及び第4番(1973年)である。
その点、本盤に収められた演奏(1976年)は、ベームの全盛時代の代名詞でもあった躍動感溢れるリズムが、本演奏ではいささか硬直化してきているところであり、音楽の自然な流れにおいても若干の淀みが生じていると言わざるを得ない。
しかしながら堅固な造型、隙間風の吹かないオーケストラの分厚い響きは相変わらずであり、峻厳たるリズムで着実に進行していく音楽は、素晴らしいの一言。
何よりも素晴らしいのは、ウィーン・フィルならではの美しい音色を味わうことができることだ。
どんなに最強奏しても、あたたかみを失わない金管楽器や木管楽器の優美さ、そして厚みがありながらも、決して重々しくはならない弦楽器の魅力的な響きなど、聴いていてほれぼれとするくらいだ。
演奏の精度、燃焼度ともに高い素晴らしい演奏で、この音の輝き、神々しさはウィーン・フィルならではのものであろう。
洗練され、ロマンティックな香りがそこはかとなく漂い、ウィーン・フィルの生の音を思い出させる自然な録音も嬉しい。
指揮者・オーケストラ・録音と3拍子揃った貴重な名演と言えるだろう。
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