2015年04月16日
朝比奈&大阪フィルのブルックナー:交響曲第8番(1994年ライヴ)
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朝比奈隆はブルックナーの交響曲全集を3度にわたって録音した世界で唯一の指揮者である。
本盤に収められた「第8」の演奏は、1990年代前半に完成させた朝比奈による3度目の全集に含まれるものである。
3度目の全集に含まれる演奏は、いずれ劣らぬ素晴らしい名演揃いであるが、その中でも「第8」は、「第3」及び「第9」に並ぶ素晴らしい名演であると言えよう。
それどころか、朝比奈が録音したブルックナーの「第8」の中でも、NHK交響楽団と録音した1997年盤、大阪フィルとの最後の演奏となった2001年盤と並んで、3強の一角を占める至高の超名演と高く評価したい。
朝比奈は、ブルックナーの交響曲の中でも「第5」とこの「第8」を得意としていたことはよく知られているところだ。
その理由はいくつか考えられるが、つまるところ朝比奈の芸風に最も符合した交響曲であったからではないだろうか。
朝比奈のアプローチは荘重なインテンポで、曲想を真摯にそして愚直に進めていくというものだ。
スコアに記された音符を1つも蔑ろにすることなく力強く鳴らして、いささかも隙間風が吹かない重厚な音楽を構築していく。
このようにスコアに記された音符をすべて重厚に鳴らす演奏であれば、カラヤンやチェリビダッケも同様に行っているが、彼らの演奏は、ブルックナーよりも指揮者を感じさせるということであろう(カラヤン&ウィーン・フィルによる1988年盤を除く)。
俺はブルックナーの「第8」をこう解釈するという自我が演奏に色濃く出ており、聴き手によって好き嫌いが明確にあらわれるということになるのだ。
これに対して、朝比奈の演奏は、もちろん朝比奈なりの同曲への解釈はあるのだが、そうした自我を極力抑え、同曲にひたすら奉仕しているように感じることが可能だ。
聴き手は、指揮者よりもブルックナーの音楽の素晴らしさだけを感じることになり、このことが朝比奈のブルックナーの演奏をして、神々しいまでの至高の超名演たらしめているのだと考えられる。
しかも、スケールは雄渾の極みであり、かかるスケールの大きさにおいては、同時代に活躍した世界的なブルックナー指揮者であるヴァントによる大半の名演をも凌駕すると言っても過言ではあるまい(最晩年のベルリン・フィル盤(2001年)及びミュンヘン・フィル盤(2000年)を除く)。
オーケストラの実力はともかくとして、ブルックナーの魂の真髄を表現する演奏という意味に於いて、これほど作為が無い、至高の演奏は筆者の試聴歴では未だかつて無いものである。
ムーティをして「晩年のカラヤンのブルックナーは神の声がする」と言わしめたが、この朝比奈の至高の超名演もスタイルは違えども、まさしく「神の声」を聴くようである。
本盤で惜しいのは大阪フィルがいささか非力という点であり、特に終結部のトランペットが殆ど聴こえないというのは致命的とも言えるが、演奏全体の評価に瑕疵を与えるほどのものではないと言える。
この演奏の素晴らしさは、演奏が終わった後の数秒の沈黙と、その後の大喝采が物語っている。
録音はマルチチャンネル付きのSACDであり、朝比奈による崇高な超名演を望み得る最高の音質で味わうことができるのを大いに喜びたい。
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