2015年03月29日
P・ヤルヴィ&シンシナティ響のシベリウス:交響曲第2番、トゥビン:交響曲第5番
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パーヴォ・ヤルヴィは、今や最も録音を活発に行っている指揮者と言えるだろう。
その数の多さもさることながら、楽曲の多種多様ぶりには驚かされるばかりである。
これは、パーヴォ・ヤルヴィが、父ネーメ・ヤルヴィ譲りの広範なレパートリーを誇っていることの証左であると考える。
ところが、不思議なのは、北欧エストニア出身の指揮者であるにもかかわらず、そして、父ネーメ・ヤルヴィが2度にわたってシベリウスの交響曲全集を録音しているにもかかわらず、シベリウスの交響曲を、現時点においても本盤に収められた第2番とクレルヴォしか録音していないということである。
しかも、それらの録音が、有名な人気作ではあるが、必ずしもシベリウスの交響曲の代表作とは言えない第2番と最も演奏される機会の少ないクレルヴォというのは、パーヴォ・ヤルヴィなりの独特の考え方があるのかもしれない。
いずれにしても、本盤の「第2」は、そうした残念な思いを補ってあまりあるほどの素晴らしい名演と高く評価したい。
本名演が素晴らしいのは、何よりもパーヴォ・ヤルヴィの表現が実に音楽性豊かであるという点である。
その棒さばきは、切れ味がよく、しかも北欧の雄大な自然が目の前に生き生きと甦って来るような演奏を繰り広げている。
オーケストラがよくコントロールされていて、フィンランドの景色を俯瞰的に見ているかのような印象を受ける。
パーヴォ・ヤルヴィは、曲想を精緻かつ丁寧に描き出しており、どこをとっても恣意的な解釈が聴かれず、音楽が自然体で滔々と流れていくのが素晴らしい。
特別な個性があるというわけではないが、スコアに記された音符のうわべだけを鳴らすという浅薄な演奏にはいささかも陥っておらず、どこをとっても情感の豊かさに満ち溢れているのが素晴らしい。
北欧の大自然を彷彿とさせるような繊細な抒情の表現にも秀逸なものがあり、シベリウスの内面的な部分とのバランスもよく、第2楽章の表現もなかなかにドラマティック。
終楽章の圧倒的な盛り上がりも圧巻の迫力であり、表現の幅はきわめて広いが、それでいて、管楽器、弦楽器そして打楽器ともに、荒っぽさを感じさせず、常にニュアンス豊かな奥行きのある演奏を繰り広げているのが見事である。
これは、パーヴォ・ヤルヴィの薫陶の下、最高のパフォーマンスを示したシンシナティ交響楽団の力量によるところが大きいと言わざるを得ない。
カップリングされているトゥビンの「第5」も、シベリウスと同様に豊かな音楽性が感じられる素晴らしい名演。
これはパーヴォ・ヤーヴィのオーソドックスでありながら、聴かせどころを盛り上げていく巧さが光っている。
同曲を収めたCDで、現在入手できるのは父ネーメ・ヤルヴィによる演奏のみであり、楽曲の質の高さの割には殆ど演奏されていない。
このような同曲の真価を広く認知させるという意味でも、本名演の登場は大いに歓迎されるべきであると考える。
マルチチャンネル付きのSACDによる極上の高音質録音も、本盤の価値を大いに高める結果となっている点を忘れてはならない。
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