2015年03月30日
ゲルギエフ&ウィーン・フィルのムソルグスキー(ラヴェル編):組曲<展覧会の絵>、他 [SACD]
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底知れぬヴァイタリティとカリスマ性を持ち合わせ、21世紀を牽引する指揮者の筆頭に挙げられるワレリー・ゲルギエフが、名門ウィーン・フィルを指揮した迫真のライヴ録音の『展覧会の絵』に加え、ムソルグスキーの名作3曲をカップリングした素晴らしい高音質SACDの登場だ。
本演奏は、レコード・アカデミー賞を受賞した名演であるだけに、初出のCDからして、ゴールドディスクとして高音質化への取り組みがなされていた。
また、更にほどなくして、SACDハイブリッド盤が発売された。
当該盤には、マルチチャンネルが付いており、その臨場感溢れる音場の幅広さは、これこそ究極の高音質CDであると考えていた。
ところが、今回のSHM−CD仕様のSACDシングルレイヤー盤は、そもそも従来の諸盤とは次元が異なる高音質と言える。
特に、『展覧会の絵』は、ラヴェルの華麗なオーケストレーションが味わえる作品だけに、今回の高音質盤は、最大限の威力を発揮する。
全体としてきわめて鮮明であるのだが、特に、トゥッティの箇所における金管も木管も、そしてそれを支える弦楽も、見事に分離して聴こえるというのは殆ど驚異ですらある。
それは、併録の『はげ山の一夜』にも言えるが、特に、『ホヴァンシチナ』前奏曲の冒頭の霧のような立ちあがりは、本盤だけが再現し得る至高・至純の繊細さと言えるだろう。
ゴパック(歌劇『ソロチンスクの市』から)におけるオーケストラの自由闊達な動きも、完璧に捉えきっているのが素晴らしい。
演奏は、前述のように、平成14年度のレコード・アカデミー賞を受賞した定評ある超名演。
ゲルギエフの濃厚で強いエネルギーでもって、激しいところは圧倒的な響きが印象的であるが、演奏しているのはウィーン・フィルということで、優しい響きのメロディーやピアニッシモのところは鳥肌が立つほど美しく、両者の特徴が上手くかみ合っている。
ゲルギエフは『展覧会の絵』を夢中になって見て回るが、そこではラヴェルの洗練されたオーケストレーション以上に作曲家ムソルグスキー生来の感性が強調されている。
指揮者はこれを実現するため、ウィーン・フィルの金管楽器奏者たちを叱咤激励し、とくに「カタコンブ」における壮大なコラール風のスタイルから曲の最後を締めくくる「キエフの大門」の圧倒的なクライマックスまで、彼らの特徴である朗々とした響きを思いきり出させている。
しかしながら、この指揮者によるルバート奏法は何箇所か、純粋に感じ取られたというよりもなにか継ぎ足されているような感じがする。
たとえば「テュイルリー」における主席クラリネットのリタルダンドや、「古城」の基本拍子を滞らせるフレージング過剰の弦楽器のレガートがそうである。
フィリップスの広がりのある音響工学はコンサート・ホールの雰囲気をよく伝えているが(これはライヴ・レコーディングなのである)、ダイナミックなインパクトと鮮やかな細部に欠けている。
フリッツ・ライナー盤やジョージ・セル盤がいまだ聴くときの基準になっているのだ。
その結果、『はげ山の一夜』の渦を巻くような勢いも拡散して響き、劇的にも平板である。
ただ、歌劇『ホヴァンシチナ』前奏曲とゴパック(歌劇『ソロチンスクの市』から)は気持ちのいい演奏で、よきつなぎ役となっている。
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