2015年04月06日
ポリーニのシューマン:ピアノ協奏曲(アバド)、交響的練習曲、アラベスク
この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。
ポリーニとシューマンの相性は非常に良いように思われる。
本盤も、そうした相性の良さがプラスに働いた素晴らしい名演と高く評価したい。
シューマンのピアノ曲の本質は、内面における豊かなファンタジーの飛翔ということになるが、ショパンやリストのような自由奔放とも言える作曲形態をとらず、ドイツ音楽としての一定の形式を重んじていることから、演奏によっては、ファンタジーが一向に飛翔せず、やたら理屈だけが先に立つ、重々しい演奏に陥ってしまう危険性がある。
ポリーニのピアニズムは、必ずしもシューマンの精神的な内面を覗き込んでいくような深みのあるものではないが、卓越した技量をベースとした透徹したタッチが、むしろ理屈っぽくなることを避け、シューマンのピアノ曲の魅力を何物にも邪魔されることなく、聴き手がそのままに味わうことができるのが素晴らしい。
いささか悪い表現を使えば、けがの功名と言った側面がないわけではないが、演奏は結果がすべてであり、聴き手が感動すれば、文句は言えないのである。
また、シューマンの作品は、どのような分野のものであれ、病的な部分というか、翳のような部分を抱え込んでしまっているケースが少なくない。
だが、ポリーニのアプローチは、そのようないわば負の部分にはあまり拘泥することなく、ピアノの音自体の強靭な存在感でもって、ほとんど直線的になされていく。
それでいて、出来上がった演奏は多面的な魅力をおび、シューマンの本質を鮮やかに掬いあげえているところに、ポリーニのすごさがあると言えよう。
ピアノ協奏曲は輝かしい情熱と豊かな詩情を兼ね備えた、最も条件のそろった名演である。
ポリーニは、鮮明なタッチと曇りのない歌心の中から誠に美しい詩情と振幅の大きな表現を浮かび上がらせている。
完璧なテクニックをうならせた彼の演奏は、揺るぎない造型的美観の把握や緊迫した集中力の持続が見事なだけでなく、美しいカンティレーナの魅力にも溢れており、そこではほとんど文句のつけようがない成果が実現されている。
アバド&ベルリン・フィルのバック・アップも十全であり、ポリーニのピアノとの間に呼吸の乱れは少しもなく、とにかく中身の濃い演奏内容である。
交響的練習曲は、シャープで躍動感に満ちた魅力をもっていて、ダイナミックかつブリリアント、壮大この上ない建造物を作りあげている。
もちろん細部まで克明に彫琢されているが、ラテン的で明るい歌謡性もが光っている。
アラベスクもポリーニはうまく、響きをたっぷりと採って、感傷に溺れないで健康的な明快な音楽に仕上げる。
ポリーニの清澄にしてきらめきのある音質を生かした演奏は、端正ななかにも、華やかな輝きをもっている。
そして、なめらかな躍動感も、その演奏に生き生きとした流動感を与えており、全体として快い流れでまとめられている。
ちょっと澄ました軽やかさで、音楽の襞を明晰に追って、あっさりともたれないところがいい。
ピアノ協奏曲、交響的練習曲、アラベスク、いずれ劣らぬ名演であり、ピアニストの個性ではなく、楽曲の素晴らしさだけが聴き手にダイレクトに伝わってくるという意味では、3曲のベストを争う名演と言っても過言ではないと思われる。
ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング
フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室。