2015年05月10日

アファナシエフのブラームス:ピアノ作品集


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アファナシエフ究極の名演という言葉は、この録音にこそふさわしいと思う。

ロシア・ピアニズムの流れを組む名手でありながら孤高の芸術世界を築くアファナシエフの描く音楽はいずれも心の深淵をのぞき込むかのように深く暗い表情を湛えている。

感情的興奮やヴィルトゥオジティとは全く次元の異なる世界にリスナーはとまどい、やがて言葉を失うほどの感銘を覚える。

アファナシエフは、ブラームスの深淵に浸りきり、研ぎ澄まされた音の中にあらゆる感情が込められた空前の表現を行っている。

前作の後期ピアノ作品集は、おそらくは過去のブラームスのピアノ作品集のCD中最高の超名演(私見ではグールドより上)であったが、本盤も、前作ほどではないものの、素晴らしい名演である。

確かに「アファナシエフ流」のインパクトは後期作品集に劣るが、ポツポツと弾かれる音が漂う「間」(ま)、その空白を感傷が埋めているような、この人特有の音空間はやはりとんでもなく美しく、録音が良いせいか、本当に音の1つ1つが冴え渡っている。

特に、作品116の7つの幻想曲は、ブラームスの最晩年の作品だけに、前作の深みのある鋭い名演に繋がるアプローチを行っている。

同曲は、複数のカプリチオと間奏曲で構成されているが、各曲ごとに大きく異なる楽想を、アファナシエフならではのゆったりとしたテンポで、ブラームスの心底の深淵を覗き込むような深遠なアプローチを行っている。

シェーンベルクの十二音技法にも通じるような深みを湛えた至純の名作であるが、アファナシエフの演奏は、まさに、こうした近現代の音楽に繋がっていくような鋭さがある。

それでいて、晩年のブラームスの心の奥底を抉り出すような深みのある情感豊かさも、感傷的にはいささかも陥らず、あくまでも高踏的な次元において描き出している点も素晴らしい。

テンポは、過去のいかなる演奏と比較しても、相当に(というか極端に)遅いと言わざるを得ないが、シューベルトの後期3大ピアノ・ソナタの時のようなもたれるということはなく、こうした遅いテンポが、おそらくはアファナシエフにだけ可能な濃密な世界(小宇宙)を構築している。

研ぎ澄まされた鋭さ、深みのある情感、内容の濃密さという3つの要素が盛り込まれたこの演奏は、聴き手にもとてつもない集中力を要求する。

その深みのある情感豊かさは、同曲の過去のいかなる演奏をも凌駕するような至高・至純の高みに達している。

4つのバラードは、ブラームスの若書きの作品ではあるが、アファナシエフの解釈は、晩年の諸作品へのアプローチと何ら変わることがない。

バラード集の時間軸を変容させ、独特の呼吸で横の線を異化していく特異な世界があるが、このバラード集に纏わりつく死のイメージをここまで音化した演奏は思いつかない。

誰の演奏を聴いてもイマイチ感のあるバラード集で、暗黒面の境界線に佇みながら静かに生者のほうを見つめるピアノを聴かせてくれる、凄い演奏が作品の方向性を作り変えている。

要は、同曲を、最晩年の作品に繋がっていく道程と位置づけており、各バラードの解釈は、初めて耳にするような深みを湛えている。

2つのラプソディーは、ブラームスとしては比較的めまぐるしく表情が変転する楽曲であるが、アファナシエフは、ここでも単なるお祭りさわぎに終始することなく、次元の高い深みのある音楽が紡ぎだされていく。

また、本質的にこの人のピアノはロマン派と相性が良いのだということが良く分かる点も、後期作品集と同様である。

そういえば、アファナシエフが「もののあはれ」を表現の原点としているというエピソードがあるが、この人の演奏を聴いていると、「もののあはれ」というものが、普通な意味でのメランコリーを否定しつつも、結局はメランコリーの一形態だったではないか、ということを思い出させられる。

我々がアファナシエフの演奏をメランコリックとつい評してしまうときも、本来そのような重層的な意味合いを意識すべきなのかもしれないが、そんな遠回りをしなくても、本盤の場合はストレートにメランコリックである。

Blu-spec-CD化によって、アファナシエフのタッチをより鮮明に味わうことができるようになったことを大いに喜びたい。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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