2015年03月31日
ゲルギエフのムソルグスキー:歌劇「ホヴァンシチナ」
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ワレリー・ゲルギエフ指揮、マリインスキー劇場管弦楽団他による1991年録音盤で、ゲルギエフ得意のロシア作品「ホヴァンシチナ」を収録されている。
基本的にショスタコーヴィチ版に依拠しているが、できるだけ作曲者の考えを尊重したゲルギエフ版だと言える。
「ホヴァンシチナ」は、未完成のままムソルグスキーが世を去ったこともあって、「ボリス・ゴドノフ」に比較して不当にも世評が低いと言わざるを得ない。
しかしながら、リムスキー=コルサコフやショスタコーヴィチなどによる編曲によって、優れた完成版が生み出されており、その内容の深さにおいて、「ボリス・ゴドノフ」にも匹敵する傑作であると筆者としては考えているがいかがだろうか。
「ホヴァンチシナ」は、17世紀のモスクワ銃兵隊の反乱(ホヴァンスキーの乱)を題材にした5幕の大作であるが、ムソルグスキーが1881年に没したため未完となり、作曲者の旧友リムスキー=コルサコフによる実用版が作成されて、ようやく1886年2月21日にサンクト・ペテルブルクで初演された。
しかし、リムスキー=コルサコフは原曲をほとんど書き換えており、その後ショスタコーヴィチがオリジナルのピアノ譜と、作曲者自身の管弦楽法の手法をもとに、改めて原曲に忠実な実用譜が作り直された。
今日では上演に用いられる実用譜はたいていショスタコーヴィチ版であるが、全編まことに美しいオペラで、特に第2幕の開始の場面や第4幕始めの女声合唱など、実に印象的で魅力的である。
リムスキー=コルサコフ版はイマイチの出来だと思うが、ショスタコーヴィチ版は、ムソルグスキーの草稿にまで踏み込んだ大変優れたものだと考える。
本盤のゲルギエフによる演奏は、ショスタコーヴィチ版をベースとして、ゲルギエフならではの編曲を施したものであり、特に、終結部に大きな違いがある。
筆者としては、ショスタコーヴィチ版のラストのムソルグスキーの作品中もっとも美しい旋律「モスクワ川の夜明け」の主題の再現が効果的で素晴らしいと思うのだが、ゲルギエフ版のように、悲劇的な殉教で締めくくるのにも一理あるとは思う。
演奏も、ロシア的なあくの強さと緻密さのバランスに優れたゲルギエフならではの超名演であり、独唱陣も合唱団も最高のパフォーマンスを示している。
ここに聴くゲルギエフ率いるキーロフの面々とソリスト陣は、(既に定評を得てムソルグスキーにこだわりぬく)アバド盤に比してもまことに立派な演奏と言えるのではないだろうか。
いかにもロシア的なテイストを振りまきつつ、でも仕上げは丁寧でしっかりしたもので、この魅力的なオペラに親しむに絶好のディスクであろう。
それにしても、ムソルグスキーは偉大だ。
同時代のチャイコフスキーは当然として、ロシア五人組のリムスキー=コルサコフやボロディンなども西欧の音楽を意識して作曲をした(だからと言って、これらの作曲家の偉大さに口を指しはさむつもりはない)が、ムソルグスキーはあくまでも西欧音楽に背を向け、ロシア音楽固有の様式を目指そうとした。
その強烈な反骨精神には拍手を送りたいし、アルコール中毒による早世を深く惜しむものである。
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