2015年11月26日

インバル&ウィーン響のショスタコーヴィチ:交響曲全集


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東京都交響楽団とのショスタコーヴィチ「第4」が2012年レコード・アカデミー賞を受賞したインバル70代半ばの解釈を、プレートルとのマーラーで実力をみせた1990年代ライヴ盤が近年高い評価を受けたウィーン交響楽団との組み合わせで聴く異色の全集。

全世界にインバルの名を知らしめたのマーラーに始まって、ラヴェル、ベルリオーズへ、短期間にある作曲家の作品を集中的に録音・発表することによってその全体像を明らかにするというインバルのアプローチとそれを実現させる力量は、そしてこのウィーン交響楽団とのショスタコーヴィチ交響曲全集に至って、一段と大きな成果を生み出した。

全体主義政権下における芸術家の苦悩、そしてその作品の本質への理解を後世に託したショスタコーヴィチの心の声が、全15曲を俯瞰することによって、より深く感得されることであろう。

フランクフルト交響楽団との多くの名盤の陰で、評判は当時も今も高くないが、管や打楽器の名演、弦の弱奏、タクトへの迅速な反応に優れたオーケストラと、練習に厳格そうな指揮者とが、双方一心に演じている。

都響ライヴと趣が違う「第4」も、指揮者の指示にオケが敏捷に動き、第3楽章後半での管と弦との掛け合いでは、フレーズごとに表情を変えながら頂点に向かっていくドライブが心地よい。

スペクタクル派と対極な「第7」でも個性が発揮され、第3楽章が宗教的なら、フィナーレはモールス信号Vを連打で表したと言う爆音が膨張するなど、聴き所は沢山ある。

さらに初期交響曲の「第1」は若々しくも老練、「第2」の近代的な音作りや奇怪なサイレン音は指揮者の心中をみるようで、「第3」はスケールが大きく、管・打楽器の演奏は恰好が良い。

他に比べ人気の低い「第6」から、この演奏が「深い森に冷たい陽がさすように始まり、最後は乱痴気騒ぎで終わった」と聴こえれば、本曲の魅力が知れると共に、全集に共通して最初モヤモヤ始まり終わりにつれてダイナミックさを増していく指揮者のポリシーが知れる。

しかしこれは聴き手の好みを分けることになるだろう。

開始が「第6」と似た「第12」も、楽譜への忠実さが定評なインバルだからこそ、終楽章での大胆なリズム変化や打楽器の炸裂は面白い。

「第8」「第11」は深刻すぎずも要所を押さえ、「第9」は管楽器のソロが優れており、第1楽章は軽快、第2楽章は奇怪、第5楽章は雄弁で、「第10」のトランペットソロの技巧とともに印象に残った。

歌手の声がよい「第13」も、煙幕の中から音が始まり、狂言と悲しみを歌う後の至福の旋律が天国へつれてゆく。

そして最後の「第15」は、他の同曲盤と比べても名解釈であり、「第1」の快活さに通じる第1楽章に続き、第2楽章の金管と独奏チェロの掛け合いはたそがれて、第3楽章のソロアンサンブルも上手い。

終楽章はヴァイオリン協奏曲の主題が魔界的に降臨し、バルトークの夜の音楽風なコーダは、暗い道を管・打楽器がどこまでもか細くつぶやき、ついにふっと吹き消えて終わる。

しかし全集の中でも「第5」と「第14」は、他の数ある名盤に譲るかもしれない。

現在、全集プロジェクトが進行する若いペトレンコの現代的な演奏と聴き比べたりすることにより、1990年代に録音された本作からも、ショスタコーヴィチを当時新たに描こうと、時代を先取ったインバルの意欲が伝わってきた。

ショスタコーヴィチの苦悩の音楽が理解されるようになった今こそ、評価されてよいものに思う。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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