2016年04月04日

ベロフのドビュッシー:ピアノ作品全集(新盤)


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実に素晴らしい名演だ。

本BOXに収められているのはベロフによる2度目のドビュッシーのピアノ作品全集であるが、これぞまさしく最高の全集であり、いずれ劣らぬ素晴らしい名演と高く評価したい。

NHK「スーパー・ピアノ・レッスン」という番組でベロフのレッスンを見たことがあるが、ドビュッシーの研究家としても一流であり、作品の作られた時代や、背景などの解説も入れながら教えて、お手本の演奏は、軟弱・茫漠とした「印象派」的ドビュッシー像を超越しており、ほれぼれと聴き入ったものであった。

かつてベロフは、EMIにドビュッシーのピアノ作品全集を録音しており、当該演奏も、ベロフの今日の名声をいささかも傷つけることがない名演と言えるところだ。

しかしながら、演奏の持つ内容の濃さ、そして楽曲の心眼に鋭く切り込んでいくような彫りの深さ、そして各楽想を描き出していくに際してのきめの細かさにおいて、2度目の全集の各ピアノ曲の演奏は断然優れていると評価し得る。

旧録音に聴かれた華やかな煌めきやスピード感、テクニックの抜群の冴えは影をひそめ、音色の透明感はいっそう美しさを増し、抑制されたタッチと絶妙のペダリングがドビュッシーに新しい響きを与えている。

こうした演奏の深化には、ベロフが、右手の故障を克服したことも大きく影響していると言えるのかもしれない。

故障から再起したベロフの心技体の充実ぶりは、ドビュッシー把握の深さを感じさせる確信に満ちた演奏として、この集成にも記録されている。

それにしても、何という美しい演奏であろうか。

素晴らしく理知的で明晰な演奏であり、これほどの表現力のあるドビュッシーも滅多にない。

ドビュッシーのピアノ作品は、いかにも印象派とも言うべきフランス風の詩情溢れる豊かな情感、そして繊細とも言うべき色彩感などを含有しているが、ベロフはそれらを研ぎ澄まされたテクニックをベースとして、内容豊かに、そして格調の高さをいささかも失うことなく描き出している。

表情の変転なども巧みに行っており、加えて、演奏の端々から漂ってくるフランス風の瀟洒な味わいには抗し難い魅力に満ち溢れている。

ドビュッシーのピアノ作品を得意としたピアニストには、ギーゼキングをはじめとして、フランソワ、ミケランジェリなどあまたの個性的なピアニストが存在している。

それらはいずれも個性的な超名演を展開しており、こうした個性的という点においては、ベロフの演奏はいささか弱い点があると言えるのかもしれない。

しかしながら、演奏内容の詩情豊かさ、彫りの深さといった点においては、ベロフによる演奏は、古今東西のピアニストによるドビュッシーのピアノ曲の名演の中でも、上位にランキングされる秀逸なものと評しても過言ではあるまい。

フランソワの演奏を油絵、ミケランジェリを水彩画とするなら、ベロフの新録音は水墨画と言ったところであろうか。

惜しむらくは、音の抜けがもう少しという印象であることだが、内容は全体に安定して高水準で、現代のスタンダードと言ってよい説得力があり、これを基準に他の演奏解釈を評価するに足るものだと思う。

いずれにしても、本盤に収められた諸曲の演奏は、まさにドビュッシーのピアノ曲演奏の理想像の具現化とも言うべき素晴らしい名演と高く評価したいと考える。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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