2015年04月06日

ギーゼキングのドビュッシー:ピアノ作品全集[SACD]


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ワルター・ギーゼキングのドビュッシーのピアノ曲の演奏はやはり素晴らしい。

稀代のドビュッシーのピアノ曲の演奏家として知られたギーゼキングであるが、遺された録音がモノラル録音であったこともあって、どうしてもその後の様々なピアニストによる演奏と比較すると、必ずしも絶対的な地位を確立していたとは言い難い状況にあったと言えるところだ。

そうしたギーゼキングの代表的な名演とも言うべきドビュッシーのピアノ曲の一連のスタジオ録音が、EMIによってSACD化され、分売されたことは、以前の各レビューにも記したところであるが、これらがまとめてセットで、しかも安価で発売される運びとなったことは何と言う素晴らしいことであろうか。

ギーゼキングによるドビュッシーのピアノ曲の演奏は、特別な個性を発揮したり、はたまた奇を衒った解釈を施したりするということは薬にしたくもなく、緻密なスコアリーディングに基づき、曲想を精緻に、そして丁寧に描き出していくという、ある意味ではオーソドックスなアプローチに徹したものと言える。

楽譜の正確な解釈と陰影豊かで格調高い演奏によるドビュッシーで、あくまで作品を知的に読み取り、余情を挟むことなく、絶妙にコントロールされた表現に徹しているものの、その内容は決して無味乾燥にはなっていないところはさすが名匠ギーゼキングであり、こまやかなニュアンスを駆使した、純度の高い至芸が聴ける。

卓越したテクニックにも出色のものがあると言えるものの、モノラル録音ということも多分にあるとは思うが、素っ気なささえ感じさせるところもあり、即物的な演奏とさえ言えるところだ。

しかしながら、一聴すると淡々と流れていく各旋律の端々には、独特の細やかなニュアンスやフランス風のエスプリ漂う豊かな情感に満ち溢れており、決して無機的な演奏には陥っていないと言える。

そして、ギーゼキングの演奏で素晴らしいのは、1950年代の演奏であるにもかかわらず、いささかも古臭さを感じさせるということがなく、むしろ、その演奏は清新さに溢れていると言えるところであり、その気高い格調の高さにおいても卓抜としたものがあったと言えるだろう。

ドビュッシーのピアノ曲を得意とするピアニストは、その後数多く誕生しているが、それらのピアニストによる数々の名演を耳にした上で、ギーゼキングによる本演奏を聴いても、録音の古さは感じても、演奏内容自体には違和感など全く感じさせず、むしろ新鮮味さえ感じさせるというのは殆ど驚異的ですらあると言えるところだ。

本セットに収められた諸曲も、前述のようなギーゼキングによる芸風が見事に表われた名演と言えるところであり、まさに古くて新しい、現代においてもドビュッシーのピアノ作品演奏の規範とも言うべき至高の名演と高く評価したいと考える。

このように、ギーゼキングによるドビュッシーのピアノ作品の演奏は、演奏自体は素晴らしいが、モノラル録音というハンディもあって、その音質は、従来CD盤では鮮明さに欠ける音質であり、時として音が歪んだり、はたまた団子のような音になるという欠点が散見されたところであった。

ところが、先般、ついに待望のSACD化が行われることによって大変驚いた。

もちろん、最新録音のようにはいかないが、従来CD盤とは次元が異なる見違えるような、そして1950年代前半のモノラル録音とは信じられないような、かなり鮮明な音質に生まれ変わったと言える。

いずれにしても、ギーゼキングによる至高の名演を、SACDによる比較的良好な高音質で味わうことができるのと、EMIがこれらの名演を集成して、低廉に入手できる運びになったことを大いに歓迎したいと考える。

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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