2015年05月09日

ヤンソンスのマーラー:交響曲第8番「千人の交響曲」[SACD]


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2011年3月4日&6日、アムステルダムのコンセルトヘボウに於けるライヴ録音で、ヤンソンス&コンセルトヘボウ・アムステルダムによるマーラーの交響曲チクルスの第6弾の登場だ。

演奏内容は、2012年秋にリリースされた「マーラー交響曲全曲ライヴ映像」に含まれていたものと同じであるが、このたびその映像もボーナスとして、ブルーレイ、DVDふたつのフォーマットで用意されるといううれしい配慮がなされている。

前作の「第3」や前々作の「第2」も名演であったが、今般の「第8」も素晴らしい名演と高く評価したい。

「第2」や「第3」もそうであったが、先ずは、録音の素晴らしさについて言及しておきたい。

本盤も、これまでと同様のマルチチャンネル付きのSACDであるが、世界でも屈指の音響を誇るコンサートホールとされるコンセルトヘボウの豊かな残響を活かした鮮明な音質は、これ以上は求め得ないような圧倒的な臨場感を誇っている。

特に、マーラーの合唱付きの大編成の交響曲の録音において、オーケストラの各セクション、独唱、合唱が明瞭に分離して聴こえるというのは殆ど驚異的な高音質であると言えるところであり、それぞれの楽器や合唱等の位置関係までがわかるほどの鮮明さを誇っている。

これまで、マーラーの「第8」では、インバル&東京都交響楽団ほかによる超優秀録音(本盤と同様にマルチチャンネル付きのSACD録音)にして素晴らしい名演があったが、本盤も当該盤に比肩し得る極上の高音質であり、なおかつ素晴らしい名演であると言えるだろう。

「第8」は、重厚長大な交響曲を数多く作曲したマーラーの手による交響曲の中でも最大規模を誇る壮大な交響曲である。

オーボエ4、イングリッシュホルン1、ホルン8のほか、チェレスタ、ピアノ、ハルモニウム、オルガン、ハープ2、マンドリンも擁する巨大オーケストラに加えて、児童合唱団や2組の大合唱団、さらには多くの独唱者たちというその特異な編成もさることながら、全曲の最初と最後に山場が置かれる独特の構成や、その間のさまざまな楽器の組み合わせによる多様なひびきの面白さ、カンタータやオラトリオを思わせるセレモニアルな性格に特徴がある。

したがって、全体をうまく纏めるのが難しい交響曲でもあると言えるところだ。

ヤンソンスは、全体の造型をいささかも弛緩させることなく的確に纏め上げるとともに、スケールの大きさを損なっていない点を高く評価したい。

また、その一方で、長丁場のドラマ作りが難しい作品とも言えるが、そこはヤンソンスのこと、中盤過ぎまで抒情的な部分が占める第2部では、埋もれがちな細部の掘り起こしにも余念がなく、第1部の冒頭主題が回帰する第2部終結部に至る道のりを丁寧な音楽づくりで手堅く纏め上げている。

そして、そのアプローチは、曲想を精緻に描き出して行くというきわめてオーソドックスで純音楽的なものであり、マーラーの光彩陸離たる音楽の魅力をゆったりとした気持ちで満喫することができるという意味においては、前述のインバルによる名演にも匹敵する名演と言える。

コンセルトヘボウ・アムステルダムは、前任のシャイー時代にその独特のくすんだようないぶし銀の音色が失われたと言われているが、本演奏においては、そうした北ヨーロッパならではの深みのある音色を随所に聴くことが可能であり、演奏に奥行きと潤いを与えている点を忘れてはならない。

豪華メンバーを揃えた独唱陣も素晴らしい歌唱を披露しており、バイエルン放送合唱団
、ラトビア国立アカデミー合唱団、オランダ放送合唱団、オランダ国立少年合唱団、オランダ国立児童合唱団も最高のパフォーマンスを示していると評価したい。

いずれにしてもヤンソンスがコンセルトヘボウに鳴り響かせた大宇宙を捉え切った極上の高音質SACD盤(同内容の全曲演奏を収録した映像特典つき)で味わえるのを大いに歓迎したいと考える。

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classicalmusic at 20:39コメント(4)マーラー | ヤンソンス 

コメント一覧

1. Posted by Kasshini   2021年01月01日 02:49
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致しますね。
マーラーが自分以上と若手ながらリスペクトしたメンゲルベルクが注釈を入れた楽譜(シャイー以降鑑みられてないのは近年のフィラデルフィア管弦楽団とは正反対ながら)と彼によって生まれた美音が持ち味でショルテイさえ正面衝突せずいなしたオケ。ショルテイCSO顔負けの録音の良さ。ゾフィエンザールより飽和しないホールだからか。オーケストラの美音と合唱団、独唱のハーモニーが見事で、弱音のソロに鳥肌。この時のマーラーティクルスは観客席の床も揺れたという、オーマンディフィラデルフィア管弦楽団、カラヤンBPhの来日演奏を彷彿とさせるエピソードも。この全集の10番分売ははなく、全集買いとなりそうですが、10番もインバル最高の名演だと思いました。RCOはセルが振れば弦楽四重奏のような緻密さをフルオケで鳴らし、クリップスが振ればヴィーン訛りを、オーマンディが振れば彼らしい美音とWPh,BPhより称える人がいるのも納得できる録音と演奏でしたね。
2. Posted by 和田   2021年01月01日 13:13
新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団と言えば短期間ながらキリル・コンドラシンとの蜜月関係も忘れられません。当時の彼はまだフィリップスとの継続的な契約に至っていなかったため、遺された音源はコンセルトヘボウとのセッション録音が僅かに1曲、客演時代のライヴを合わせてもCD11枚分に過ぎませんが、コンドラシンの典型的な演奏を堪能することができる上に、音質にも恵まれています。いずれもテンポ設定は比較的速めですが、細密画のように精妙に仕上げた色彩感とオーケストラの重心の低さが、それぞれの作品の音楽美学を手に取るように再現されています。どれもオーケストラの名門コンセルトヘボウの力量を示す充実したサウンドと、コンドラシンによって導かれる絶妙なダイナミズムの変化が聴きどころです。ウィンド・セクションの音色が意外に渋いですが、アンサンブルの精緻さではヨーロッパでもトップクラスの余裕と貫禄をみせています。
ところで年越しはレヴァイン&ウィーン・フィルのミサ・ソレムニスを聴きました。オペラのように壮大な表現とヘッツェルの絶唱が光る素晴らしい名演でしたね。
3. Posted by Kasshini   2021年01月02日 06:10
これで、アーノンクールのピリオドアプローチについていくという歴史的にヴィブラート掛ける文化は、アメリカが最速もしくは、フランスとロシア含む旧東ドイツ含む東欧が生んで、メンゲルベルク自身がヴィブラートとポルタメントがガンガン掛けながらノンヴィブラート勢に負けない清澄な響きとノンヴィブラートでも痩せない響きアンサンブルと、セル、オーマンディ、カラヤンに比肩するアンサンブルビルダーだったとメンゲルベルクには思ったり。現代音楽もオペラも実は得意と世界最高のオケも納得。目立たないだけで。バーンスタインのマーラー演奏のテンポが似ていたところもで、この録音品質で、マーラー8番とバーンスタインは好まないでしょうけど、10番補筆完成で聴いてみたかったですね。コンドラシンはキチンと聴いていないのですが、ショスタコーヴィチ自身がムラヴィンスキーよりお気に入りであったことを考えれば納得ですね。この何でも室内楽的緻密さと美音と訛りを両立できてしまうオケなら。
レヴァインのWPhのベートーヴェン ミサ・ソレムニスはいい論評を何故か見ない、個別に再発されていいはずの名盤ですからね。
4. Posted by 和田   2021年01月02日 12:45
私自身の好みで言えばシュターツカペレ・ドレスデンがベストのオケです。この楽団のアンサンブルの比類のない特色は、そのふくよかな音色の魅力と深みのある響き、細部まで一糸乱れぬ精緻な奏法の統一です。ドレスデンの市街地のはずれにあるルカ教会がSDの練習場兼録音スタジオがありますが、この教会のみずみずしい音響効果を、全メンバーが熟知して演奏するという利点も生まれています。それは形容を絶するつややかで晴朗な響きであり、SDの優雅な音楽が堪能できます。すぐれた指揮者を得ればドイツ最高のアンサンブルであると思います。これは決して誇張ではありません。このオーケストラもまた東西ドイツの統一という大変革期に巻き込まれましたが、その四百年を越える強固な伝統が揺らぐことはないでしょう。オーケストラの地域文化における役割を痛感させる団体です。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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