2015年05月04日

カラヤン&ベルリン・フィルのR.シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」(DVD)


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カラヤンはR.シュトラウスを十八番にしていたが、とりわけ交響詩「英雄の生涯」に私淑していたようであり、R.シュトラウスの全交響詩の中でも最もスケールの大きい作品だけに、遺された録音はいずれも精緻さと重厚さを兼ね備えた20世紀最高のR.シュトラウス演奏と言える。

スタジオ録音では、1959年盤(DG)と1974年盤(EMI)、1985年盤(DG)の3種が存在しており、ライヴ録音でもモスクワ盤(1969年)や、ロンドン盤(1972年及び1985年)など複数が存在している。

前述した演奏のいずれもがベルリン・フィルとのものであることが特徴と言えるところであり、カラヤンが同曲を演奏するにあたってはオーケストラの機能性を重視していたことがよく理解できるところだ。

カラヤンはライヴでこそその真価を発揮する指揮者であり、前述の3種のライヴ録音は素晴らしい超名演ではあるが、ここでは本盤と3種あるスタジオ録音の間の比較を軸に論じていくこととしたい。

いずれも名演の名に値すると思うが、演奏の性格は大きく異なると考えられる。

1959年盤については、カラヤンによるDGへのデビュー盤でもあるが、この当時はベルリン・フィルにフルトヴェングラー時代の重心の低い音色の残滓が存在しており、シュヴァルベのヴァイオリンソロはいかにもカラヤン好みの官能的な美しさを誇ってはいるものの、オーケストラの音色はいわゆるカラヤンサウンドで満たされているとは言い難い面があり、カラヤンの個性が完全に発揮されているとは言い難いとも言える。

これに対して1974年盤は、カラヤン色が濃い演奏と言える。

シュヴァルベのヴァイオリンの官能的な美しさは相変わらずであるが、オーケストラは肉厚の弦楽合奏、ブリリアントな金管楽器の朗々たる響き、桁外れのテクニックを示す木管楽器、雷鳴のように轟くティンパニなどをベースに流麗なレガートが施されるなど、いわゆるカラヤンサウンドが満載であり、徹頭徹尾カラヤン色に染め上げられた演奏に仕上がっている。

これに対して1985年盤は、カラヤンの統率力の衰えから、カラヤンサウンドを聴くことができるものの、1974年盤のように徹頭徹尾ということにはなっていない。

したがって、音のドラマの構築という点では1974年盤よりも劣っていると言わざるを得ないが、本演奏にはカラヤンが自らの人生を自省の気持ちを込めて顧みるような趣きが感じられるところであり、枯淡の境地にも通じるような味わい深さといった面では、1959年盤や1974年盤をはるかに凌駕していると言えるだろう。

ことに自己の回想録のように深く沈み込んだような美しさはそれまでには見られなかったもので、それに加えてオーケストラの唖然とする合奏力は、カラヤン美学の総決算と言ってもいいだろう。

これには、ヴァイオリンソロが官能的な美しさを誇るシュヴァルベから質実剛健なシュピーラーに変わったのも大きいと考えられる。

いずれにしても、これら3種の名演の比較については困難を極めるところであり最終的には好みの問題になるとは思うが、筆者としては、カラヤンが最晩年に至って漸く到達した枯淡の境地、至純の境地を味わうことができる1985年盤を随一の至高の超名演と高く評価したいと考える。

本映像作品はこの1985年盤と同時期に収録されたものだが、すべて同じセクションから取られたものではないものの、基本的なコンセプトは全く同一なのは言うまでもない。

その場合は、やはり映像がある方が迫力が非常に大きくなるという点で魅力が倍増する。

特にカラヤンが指揮した時のベルリン・フィルの気合いの入った集中力の高さは見ていて本当に圧倒される。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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