2015年05月23日

インバル&都響のマーラー:交響曲第5番


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インバルが東京都交響楽団を指揮して演奏したマーラーの新チクルスシリーズは素晴らしい名演揃いであるが、本盤に収められた「第5」も素晴らしい名演と高く評価したい。

インバルは、マーラーの「第5」をかつての手兵フランクフルト放送交響楽団とスタジオ録音(1986年)するとともに、東京都交響楽団とのライヴ録音(1995年)やチェコ・フィルとのライヴ録音(2011年)もあるが、本演奏は、それらの演奏をはるかに凌駕する名演と言える。

かつてのインバルは、マーラーへの人一倍の深い愛着に去来する内なるパッションをできるだけ抑制して、できるだけ音楽に踏み外しがないように精緻な演奏を心掛けていたように思われる。

したがって、全体の造型は堅固ではあり、内容も濃密で立派な演奏ではあるが、ライバルとも目されたベルティーニの歌心溢れる流麗さを誇るマーラー演奏などと比較すると、今一つ個性がないというか、面白みに欠ける演奏であったことは否めない事実である。

前述の1986年盤など、その最たる例と言えるところであり、聴いた瞬間は名演と評価するのだが、しばらく時間が経つとどんな演奏だったのか忘却してしまうというのが正直なところだ。

ワンポイント録音による画期的な高音質だけが印象に残る演奏というのが関の山と言ったところであった。

1995年盤や2011年盤になると、ライヴ録音ということもあり、インバルにもパッションを抑えきれず、踏み外しが随所にみられるなど、本盤に至る道程にある名演と言うことができるだろう。

そして、本盤(2013年)であるが、ここにはかつての自己抑制的なインバルはいない。

インバルは、内なるパッションをすべて曝け出し、ドラマティックな表現を施しているのが素晴らしい。

強靭なサウンドとマーラーの精神性をめぐらし、細部の細部にまで音に命を宿らせるインバルの真骨頂が全開している。

それでいて、インバルならではの造型の構築力は相変わらずであり、どんなに劇的な表現を行っても、全体の造型がいささかも弛緩することがないのは、さすがの至芸と言うべきであろう。

マーラーのスコアを細部に至るまで忠実に、そして美しく力強くニュアンス豊かに再現して、どの瞬間も音が意味深く鳴っている。

対位法の各声部はそれぞれが切れ込み鋭くエッジがきいていて、意味づけや存在感を主張し合っている。

そしてテンポや音量の変化も大きく刺激的で、決して表面上きれいにバランス良くまとめたような演奏ではなく、美しく官能的な旋律も、素直に酔わせてはくれない。

しかしそれこそがマーラーであり、インバルが表現したいことであろう。

好き嫌いが分かれるかもしれないが、筆者はこれこそがスタンダードとすべき名演奏と思われる。

いずれにしても、インバルが東京都交響楽団と、本盤のようなドラマティックな表現を駆使するようになったインバルを聴いていると、バーンスタインやテンシュテット、ベルティーニが鬼籍に入った今日においては、インバルこそは、現代における最高のマーラー指揮者であるとの確信を抱かずにはいられない。

オーケストラに東京都交響楽団を起用したのも功を奏しており、金管楽器、特にトランペットやホルンの卓抜した技量は、本名演のグレードをさらに上げる結果となっていることを忘れてはならない。

ワンポイント・レコーディング・ヴァージョンよる極上の高音質録音も、本名演を鮮明な音質で味わえるものとして大いに歓迎したい。

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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