2015年05月05日
ムーティのヴェルディ:歌劇「オテロ」[SACD]
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ヴェルディ生誕200年のアニヴァーサリー・イヤーに当たる2013年、様々な関連ディスクがリリースされていたが、リッカルド・ムーティが2011年に収録したヴェルディの『オテロ』も注目すべきものの1つに掲げられよう。
ムーティ&シカゴ交響楽団の著しい進境を示すもので、気鋭の歌手陣を起用し、細部までムーティの意図が浸透した秀演であると高く評価したい。
資料によると、ムーティは2011年4月7、9、12日とシカゴ交響楽団の定期演奏会で『オテロ』を演奏会形式で上演、さらに一同を率いて15日にはニューヨークのカーネギー・ホールでも演奏しており、相当力を入れていたことが分かる。
本盤の大きな特徴として以下の2点を挙げたい。
・オペラを主戦とするオーケストラではなく、シカゴ交響楽団という世界屈指のシンフォニー・オーケストラを振っていること。
・オテロとデズデモナの2人の主役に、イタリア人歌手を起用しなかったこと。
これらの点から、ムーティは、このオペラの普遍的な価値を強く打ち出した演奏を目指した、と考えたい。
参考までにあらためて配役を書くと以下の通りだ。
アレクサンドルス・アントネンコ(T オテロ)
カルロ・グェルフィ(Br イアーゴ)
クラッシミラ・ストヤノヴァ(S デズデモナ)
フアン・フランシスコ・ガテル(T カッシオ)
バルバラ・ディ・カストリ(Ms エミーリア)
マイケル・スパイアズ(T ロデリーゴ)
エリック・オウェンズ(Bs-Br ロドヴィーコ)
パオロ・バッターリア(Bs モンターノ)
デイヴィッド・ガヴァーツン(Bs 伝令)
オテロとデズデモナは、それぞれラトヴィアの歌手アントネンコと、ブルガリアの歌手ストヤノヴァが担当している。
そのため、伝統的なイタリア・オペラといった雰囲気とはやや違った風合いを感じる、というのは筆者の「思い込み」の部分もあるかもしれないが、当演奏を聴いてみると、いわゆるイタリア・オペラの歌唱を形容する大雑把な言葉である「ベルカント」とは少し違った、もっと地に足のついたような力強さがある歌唱が表出しているように感じられる。
そして、これが実にうまく効いていて、落ち着いた劇的高揚感が得られ、いかにも立派な音楽として鳴っているのである。
また、オーケストラがダイナミックレンジの広い劇的な音響を構築していることから、数ある『オテロ』中でも、シンフォニックな演奏と言えるものになっていると思う。
加えて、多彩な楽器が登場するこのオペラの色彩的な性格も、SACDマルチチャンネルの的確な録音が適度なスケールで捉えていて、例えば1枚目12トラックのマンドリンと合唱の鮮明な響きなど、本録音ならではの魅力と感じる。
デュエイン・ウルフの確かな統率の下、シカゴ交響楽合唱団も最高のパフォーマンスを示している。
一方で、前述したように、この作品に、いかにもイタリア・オペラらしい雰囲気を求める人には、違和感の残る演奏かもしれない。
他の歌手ではイアーゴのグエルフィは、近年珍しいくらい憎々しくいやらしい個性的な歌唱で、全体的に目立つと言えば目立つが、ちょっと浮いているようにも思う。
このあたりも、イアーゴにどんな表情づけを望むのかといった「聴く人の好み」で評価は分かれるだろう。
とはいえ、2013年にリリースされた注目盤の1つであることは間違いないので、ムーティの新しい意図を体験してみたいという方には、是非ともお薦めしたい1組である。
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