2015年04月23日

ゲルギエフ&ロンドン響のマーラー:交響曲全集[SACD]


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2007年収録の第6番でスタートし、2011年の第9番で完結したゲルギエフ指揮ロンドン交響楽団によるマーラーの交響曲全集が、10枚組のBOXセットとなって低廉に入手できる運びになったことをまずは喜びたい。

ゲルギエフのマーラー交響曲全集は、第8番を除きすべてロンドン、バービカンホールでのロンドン交響楽団とのライヴ録音である。

50代後半のいかにもエネルギッシュなゲルギエフらしい一気呵成な対応であり、手兵のオーケストラを一定期間集中させ、全曲に一貫した解釈を施すうえではこの短期決戦のライヴ録音は有効だが、その実、相当な自信に裏づけされたものであろう。

このシリーズは、すべてコンサートでの演奏をライヴ録音しているところにその特徴があり、実演における白熱の模様がストレートに肌で感じられるのも魅力のひとつと言えるところであり、第6番や第7番などはその最たる例で、極端なテンポ設定や荒削りでユニークなアプローチも際立っていた。

また、シリーズの大詰めの時期にあたる第5番と第9番では、同一プログラムを数多くこなしたのちに、周到な準備を経て収録に臨んだこともあり、完成度の高さでもゲルギエフがロンドン交響楽団のシェフに就任して以来、屈指の成果を示している。

ことに第9番は、ゲルギエフ&ロンドン交響楽団によるマーラーチクルスの中でも飛び抜けた内容を誇る名演と高く評価したい。

しかしながら、上記以外の各交響曲の演奏を顧みると、名演とイマイチの演奏が混在しており、玉石混交と言った状況にある。

これまで発売されたいずれの交響曲も、聴く前は、名演、駄演のどちらに転ぶかわからないといった予測が付かない不安があったが、総体としては、これまでの様々なマーラー演奏の中でもかなり上位にランキングできる素晴らしい名演集と評価してもいいのではないか。

ゲルギエフは、ここでは、チャイコフスキーやショスタコーヴィチ、ストラヴィンスキーなどで垣間見せた野性味溢れるドラマティックなアプローチは薬にしたくもない。

むしろ、自我を極力抑えて、マーラーの音楽を精緻に美しく描き出していくことに専念しているように思われる。

もちろん、演奏に強弱の起伏がないわけではなく、トゥッティにおける金管楽器やティンパニなどの最強奏は圧巻の迫力を誇っているのだが、いわゆる踏み外しがいささかも感じられないのである。

これは、ゲルギエフが、テンポの変化を最小限に抑えているのに起因しているのかもしれない。

したがって、この演奏の場合、ドラマティックな要素は極めて少なく、むしろ、スケールの壮大さで勝負した感がある。

このようなアプローチは、本来的にはマーラーのような劇的な要素が支配的な交響曲の場合には相応しいとは言えないが、前述のような壮大なスケール感と精緻な美しさによって、マーラーに新鮮な魅力を見出すことに成功した点は評価せざるを得ないのではないかと考える。

マーラーに、ドラマティックな演奏を期待する聴き手、バーンスタインやテンシュテットなどの劇的な名演を好む聴き手からは、物足りないとの批判が寄せられることは十分に予測されるが、音楽構成を大きく捉えて細部をよく彫琢し、かつメロディの美しさとリズムの躍動感を際立たせた演奏は抜群のバランス感覚を感じさせる。

筆者としては、マーラーに新しい光を当てた異色の名演として、高く評価したいと考えている。

SACDマルチチャンネルによる極上の高音質録音も、ゲルギエフの精緻なアプローチを鮮明に再現し得るものとして、大いに歓迎したい。

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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