2015年04月09日

ブレンデルのシューベルト:即興曲集(新盤)


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シューベルトの即興曲全8曲を演奏したものとしては、ブレンデルのCDが特に優れたものと言える。

そのシューベルトをおそらくは全ピアニストで最も理解しているブレンデルの即興曲集は格別の美しさだ。

まろやかなタッチで、これらの作品からロマンの息吹きを詩情豊かに弾き出した演奏で、その即興性に満ちた“歌”の美しさは比類がない。

ブレンデルは徹底して通俗性を排しながら、たおやかな歌が淡々と歌われてゆく。

和音の微妙なニュアンスも絶品で、ブレンデルのデリケートで考え抜かれたアプローチが、全面的に生かされていると言えよう。

ブレンデルはシューベルトの抒情を大切にしながらも、この曲集を2つのソナタのように、統一感のある構成力で美しくまとめている。

各曲とも、実に綿密に設計された演奏で、それぞれの曲の性格をしっかり浮き彫りにしており、細部まで完璧にコントロールされているが、音の柔らかさと流れの自然さが知と情の見事なバランスを保っている。

ブレンデルが弾くシューベルトは、ピアノ・ソナタも小品集も、安定と調和を聴き手に強く意識させるところがある。

決して激しすぎず、決して過剰な感情に溺れない、本質的に“中庸”を志向する気質なのだろう。

そうした中庸の落ち着きのある表現が、聴き手に精神的な安らぎをもたらし、潤いのある自然な抒情が感覚的な楽しみを与えてくれる。

しかもブレンデルの演奏は、1音1音がしっかりと打鍵されており、ピアニッシモまで良く聴きとれるので、曲の構成が良く分かる演奏である。

寂寥感と美しさが渾然一体となったシューベルトの即興曲集であるが、ブレンデルの演奏は、曲の構成が明瞭であるだけではなく、抒情と知性のバランスが良く取れている、模範的な演奏と言える。

これは、寂寥感も美しさも良く出ているが、情に流れたり、知的になり演奏が硬くなっていないと言う意味であり、ただ単に中庸ということではない、優れた演奏で、何度聴いても飽きない。

特に作品142の第3番は、纏綿とうたわれる歌が実に美しく、ウィーンの音楽家シューベルトを実感させるだろう。

聴き手を強引に自分の世界に引っ張っていこうとしないのに、聴き手がついてくる、それがブレンデルのシューベルトだ。

CDは新旧2種類の録音があるが、もちろんここではブレンデルの円熟の境地を示した新しいデジタル録音を推しておく。

新盤は、旧盤に比べると、ブレンデル独特の美しい音色と巧まざるその語り口にいっそう磨きがかかり、しかも一段と彫琢された音と表現が素晴らしく、シューベルトの孤高な世界と高貴な美しさを浮き彫りにしている。

自然な表情をもって、美しい佇まいのなかにも緊張感の漲った感動的な表現で、詩人ブレンデルの面目躍如たる名演だ。

筆者の知る限りでは、リリー・クラウス、内田光子と並ぶ即興曲の3強の1角を占める演奏と言って良く、今までシューベルトを敬遠していた人もこれを聴けばきっとシューベルトへの入り口が開けるはずだ。

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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