2015年06月28日
アバド&ウィーン・フィルのマーラー:交響曲第4番[SACD]
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これはアバド最良の遺産のひとつである。
本盤に収められたマーラーの交響曲第4番は、アバドによる2度にわたる同曲の録音のうち最初のものに該当する。
最新の演奏は2005年にベルリン・フィルを指揮したものであるが、それは近年のアバドの円熟ぶりを窺い知ることが可能な至高の名演であった。
したがって、それより四半世紀以上も前の本演奏の影はどうしても薄いと言わざるを得ないが、筆者としては、若きアバドならではのファンタジーと幸福感に溢れた独特の魅力がある素晴らしい名演と高く評価したい。
アバドが最も輝いていた時期はベルリン・フィルの芸術監督就任前であり、この時期(とりわけ1970年代後半から1980年代にかけて)のアバドは、楽曲の頂点に向けて畳み掛けていくような気迫や強靭な生命力、そして持ち前の豊かな歌謡性が付加された、いい意味での剛柔バランスのとれた名演の数々を成し遂げていた。
本演奏は、そうしたアバドのかつての長所が大きく功を奏し、ウィーン・フィルのふくよかでいぶし銀のような響きと、アバドの緻密さとさわやかな歌謡性がマッチした素晴らしい名演に仕上がっている。
マーラーの交響曲第4番は、他の重厚長大な交響曲とは異なり、オーケストラの編成も小さく、むしろ軽妙な美しさが際立った作品であるが、このような作品になるとアバドの歌謡性豊かな指揮は、俄然その実力を発揮することになる。
本演奏は、どこをとっても歌心に満ち溢れた柔和な美しさに満ち溢れており、汲めども尽きぬ流麗で、なおかつ淀みのない情感の豊かさには抗し難い魅力がある。
しなやかでふくよかなウィーン・フィルの音色が十分に生かされ、すべてが美しく歌っているからである。
それでいて、流麗なだけでなく充分に劇的で、生命力の躍動にも富んでおり、ここぞという時の力奏には気迫と強靭な生命力が漲っており、この当時のアバドならではのいい意味での剛柔バランスのとれた素晴らしい名演に仕上がっていると高く評価したい。
オーケストラにウィーン・フィルを起用したのも功を奏しており(ウィーン・フィルがステレオで録音した初めての第4番)、アバドの歌謡性の豊かな演奏に、更なる潤いと温もりを与えている点を忘れてはならない。
ゲルハルト・ヘッツェルのヴァイオリンソロも極上の美しさを誇っており、終楽章におけるフレデリカ・フォン・シュターデによる独唱も、最高のパフォーマンスを発揮していると評価したい。
とはいえ、ここではアバドがかなり自己主張しており、ウィーン・フィルの美演を聴くというよりはアバドの指揮に耳を傾ける演奏となった。
特に第1楽章は若々しく新鮮で、大変スマートなマーラーであり、また極めて分析的で、曲想の移り変わりに神経を使っている。
第2楽章のクラリネットにつけられたルバートの巧みさなど息もつかせぬ面白さである。
音質は、1970年代のアナログ録音であるものの、従来CD盤でも比較的良好な音質であり、数年前にはSHM−CD盤も発売されるなど、比較的満足できるものであった。
ところが、今般、ついに待望のシングルレイヤーによるSACD&SHM−CD化が行われるに及んで大変驚いた。
音質の鮮明さ、音場の幅広さ、そして音圧のいずれをとっても一級品の仕上がりであり、あらためてSACDの潜在能力の高さを思い知った次第である。
いずれにしても、アバド&ウィーン・フィルによる素晴らしい名演を、現在望み得る最高の高音質であるシングルレイヤーによるSACD盤で味わうことができるのを大いに歓迎したい。
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