2015年04月09日

ブレンデル70歳記念企画/シューベルト:ピアノ・ソナタ集(ライヴ録音)


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1997〜99年、ロンドン、アムステルダム及びフランクフルトでのライヴ録音。

新世紀を迎える年に満70歳になったブレンデルの、初のライヴ録音によるシューベルト・ソナタの2枚組。

丁寧にレパートリーを選び、深い洞察と研究に基づく滋味豊かな名録音を数々残してきたブレンデルが初めてライヴで収録したシューベルトのソナタ集である。

シューベルトのソナタは、ブレンデルにとって特別思い入れのある作品であり、後期のソナタはすでに2回のスタジオ録音を行ったが、第9番は今回が初めての録音となる。

シューベルトの作品に注ぐブレンデルの厳しくも温かい眼差しと、作品の内部に深く立ち入る真摯な態度を感じさせ、1度聴けば忘れがたく耳に残る、決して聴き飽きることのない見事な演奏だ。

1970年代前半、そして80年代後半にブレンデルは同じようなソナタ集を出しており、今回のアルバムの中には3度目の録音(第20番と第21番)となるものさえある。

ソナタとはいえ、ベートーヴェン的な構築性とは異なり、“枠”や“しがらみ”から解放されたような奔放なまでの自適さや闊達さ、そして汲めども尽きぬ歌心に満ちた旋律線などシューベルト固有の世界が広がる。

ブレンデルの演奏はこの“宝の山”の価値を思い知らせてくれており、とりわけ第20番や第21番などは、清冽な音色(タッチ)と熟成した表現が瑞々しい。

聴き手を構えさせることなく、ごく自然に引き込み、深い思索と詩情に浸らせてくれるところなど、ブレンデル自身が到達し得た至高の芸域を痛感する演奏だ。

本盤は、そうしたブレンデルの実力がよくわかるCDで、最後の作品は内田光子の演奏に及ばない部分もあるものの、初期作や「幻想」ではブレンデルの実力が存分に発揮されており、シューベルトの心境がピアノの響きから手にとるようにわかる好演である。

「幻想ソナタ」(D.894)は、出だしの主題フレーズの柔らかい和音の響きを巧妙な色合いの変化で悠長に歌い上げている。

また第21番(D.960)では、全楽章にブレンデルの落ち着いた深い情感が漲っており、特に長大な第4楽章を弾ききる集中力、出だしの旋律の躍動感あるタッチはブレンデルならではの円熟の表情である。

これほど強弱をつけて、シューベルトの美しさを見事に歌い込めるピアニストは、ブレンデルだけであり、理詰めで音楽が分かっている凄い人である。

現役ピアニストのほとんどはテンポを不用意に動かして、例外なく自滅している。

本来シューベルトに強弱をつけることは自殺行為なのであるが、この人ほどシューベルトが分かっていると、このような離れ業が可能なのであろう。

明らかに“シューベルト弾き”は存在すると思うが、ショパンやシューマンを得意にするピアニストから比べると、その数はほんのわずかであり、“誰でも”というわけにはいかぬが、ブレンデルはその中でも筆頭格的存在だ。

あと現役ではカツァリスがいい演奏を聴かせるが、その方法は伝統的な枠をしっかり守ったもので、ブレンデルのシューベルトは常識を突き抜けて素晴らしく、尊敬に値する。

円熟の巨匠、ブレンデルの溢れる歌心がホールの聴衆を温かく包んだコンサートの雰囲気までもが伝わるライヴ・レコーティングである。

ブレンデルの演奏は、シューベルトの音楽を十ニ分に表現した本当に美しいものであるが、体調が良く、シューベルトと対峙する気構えのある時に聴く分はともかく、体力や気力の萎えているときはさすがに厳しくしんどいところがある。

しかし筆者にとって決して手放せないディスクであることだけは確かだ。

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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