2015年04月09日
ズヴェーデン&オランダ放送フィルのブルックナー:交響曲第3番[SACD]
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ブルックナーやストラヴィンスキー、ブラームス全集などで注目を集めるオランダの指揮者、ズヴェーデンは、現在、オランダ放送フィルとブルックナーの交響曲を継続的にレコーディングしており、既に第2番、第4番、第5番、第7番、第8番、第9番の6曲の録音を終了し、どの作品でも高い評価を受けていたところである。
それゆえ、既に発売された各交響曲の演奏のいずれもが水準の高い名演であることに鑑みれば、このコンビでブルックナーの交響曲全集を完成して欲しいと思っていた聴き手は筆者だけではないとも思われる。
そして今般、続編である第3番(2011年録音)が登場したのは実に慶賀に堪えないところだ。
ズヴェーデンは1960年生まれで未だ50歳になったばかりでもあり、是非とも今後残る交響曲の録音を行っていただき、全集を完成していただくことをこの場を借りて強く要望しておきたいと考える。
ズヴェーデンのブルックナーの交響曲へのアプローチは、これまでに録音された交響曲の演奏でもそうであったが、ヴァントや朝比奈などの数々の名演によって通説となりつつある、いわゆるインテンポを基調とする演奏スタイルを原則として採用している。
もっとも、インテンポによる演奏を基調とはしているが、随所においてテンポを微妙に変化させることによって、演奏に効果的なスパイスを利かせていることも付記しておく必要がある。
そして、各旋律の歌わせ方には、ロマンティシズムの香りが漂っており、加えて、細部にわたって独特の表情づけを行うなど、単にスコアに記された音符の表層だけを取り繕っただけの薄味な演奏にはいささかも陥っておらず、常に含蓄のある豊かな情感に満ち溢れた演奏を行っているのが素晴らしい。
したがって、演奏全体としては、いわゆるブルックナーらしさをいささかも失っておらず、とりわけ第2楽章の清澄な美しさなど、抗し難い魅力に満ち溢れていると評価したい。
以前みられた弦セクション重視の傾向もあまり表れておらず、響きも標準的であるが、それでもコンマス出身だけあって、ヴァイオリン群の美感が今回特に素晴らしく、幻惑的な美しさを醸し出している。
総じて、ズヴェーデンのブルックナーの中でも、オーソドックスでありながら、ずば抜けた美しさを持った1枚に仕上がっていると言えよう。
本演奏の当時のズヴェーデンは未だ50歳であるが、指揮者としては若手であるにもかかわらず、これだけの風格のある、そして彫りの深い演奏を成し遂げたということ自体が驚異的であり、ズヴェーデンという指揮者の類稀なる才能を感じるとともに、今後さらに大化けしていくことも十分に考えられるところだ。
いずれにしても、本盤に収められた交響曲第3番の演奏は、前作第8番の演奏と同様に、ズヴェーデンがブルックナー指揮者として健在であることを世に知らしめるとともに、残された他の交響曲(第0番、第1番、第6番)の演奏にも大いに期待を抱かせる素晴らしい名演と高く評価したいと考える。
また、本盤で素晴らしいのは、マルチチャンネル付きのSACDによる極上の高音質録音である。
最近では、エクストン・レーベルを筆頭にして、SACD盤を積極的に発売しても、マルチチャンネルから撤退するケースが多いようであるが、本盤のような、各楽器セクションの配置が明瞭にわかるような臨場感溢れる鮮明な高音質を聴いていると、是非ともマルチチャンネル付きのSACDを復活させていただきたいと切に願わざるを得ないところだ。
そして、かかるマルチチャンネル付きのSACDによる圧倒的な高音質録音が、本演奏の価値を高めるのに大きく貢献しているのも忘れてはならない。
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