2015年08月06日

クレンペラーのモーツァルト:後期6大交響曲集[SACD]


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クレンペラーはモーツァルトが大好きだったようで、交響曲を筆頭に、オペラから協奏曲、セレナーデなど数多くのレパートリーを演奏していた。

本セットに収められたモーツァルトの後期6大交響曲集の名演としては、ワルター&コロンビア交響楽団、ベーム&ベルリン・フィル、クーベリック&バイエルン放送響などによる名演がいの一番に思い浮かぶ。

これらの名演と比較すると、本盤に収められたクレンペラーによる演奏は、一部の熱心なファンを除き、必ずしもこれらのベストの名演との評価がなされてきたとは言い難いと言っても過言ではあるまい。

確かに本演奏は、前述の名演が基調としていた流麗な優美さなどは薬にしたくなく、むしろ、武骨なまでに剛直とさえ言えるところだ。

クレンペラーは悠揚迫らぬインテンポで、1音1音を蔑ろにせず、各楽器を分厚く鳴らして、いささかも隙間風の吹かない重厚な演奏を展開している。

まさにクレンペラーは、ベートーヴェンの交響曲を指揮する時と同様のアプローチで、モーツァルトの交響曲にも接していると言えるだろう。

しかしながら、一聴すると武骨ささえ感じさせる様々なフレーズの端々から漂ってくる深沈たる情感の豊かさには抗し難い魅力があると言えるところであり、このような演奏の彫りの深さと言った面においては、前述の名演をも凌駕しているとさえ思われるところである。

巧言令色とは程遠い本演奏の特徴を一言で言えば、噛めば噛むほど味が出てくる味わい深い演奏ということになる。

いずれにしても本演奏は、巨匠クレンペラーだけに可能な質実剛健を絵に描いたような剛毅な名演と高く評価したい。

その、武骨な中にも共感に満ちた演奏の数々は、現在聴いても存在感たっぷりで、意外にも快速なテンポで飛ばす『リンツ』から、巨大なスケールで対位法の面白さを印象づける『ジュピター』に至るまで、聴きごたえある演奏が揃っている。

近年では、モーツァルトの交響曲の演奏は、古楽器奏法やピリオド楽器を使用した演奏が主流となりつつあるが、そのような軽妙な演奏に慣れた耳からすると、クレンペラーによる重厚にしてシンフォニックな本演奏は実に芸術的かつ立派に聴こえるところであり、あたかも故郷に帰省した時のように安定した気持ちになる聴き手は筆者だけではあるまい。

音質は今から約50年ほど前の録音であるが、従来CD盤でも比較的満足できる音質であったと言える。

このような中で、数年前にHQCD化されたことにより、音質は更に鮮明になるとともに音場が幅広くなったように感じられるところであり、筆者も当該HQCD盤を愛聴してきたところだ。

しかしながら、先般、ついに待望のSACD化が行われることによって大変驚いた。

従来CD盤やHQCD盤とは次元が異なる見違えるような、そして約50年前のスタジオ録音とは到底信じられないような鮮明な音質に生まれ変わったと言える。

いずれにしても、クレンペラーによる至高の名演を、SACDによる高音質で味わうことができるのを大いに歓迎したいと考える。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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