2023年04月17日

🏆技術的な完成度の高さとシャープさ❗気宇壮大さをも併せ持つ完全無欠の名に相応しいアルバン・ベルクSQ🎻ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集(旧盤)💯


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アルバン・ベルク四重奏団(ABQ)は、1970年に、ウィーン音楽アカデミーの4人の教授たちによって結成された。

アルバン・ベルクの未亡人から、正式にその名前をもらったという。

そうしたことからでもわかるように、この団体の演奏は、ウィーン風のきわめて洗練された表情をもち、しかも、高い技巧と、シャープな切り口で、現代的な表現を行っているのが特徴である。

惜しまれつつ解散をしてしまったABQであるが、ABQはベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集を2度に渡って録音している。

最初の全集が本盤に収められた1978年〜1983年のスタジオ録音、そして2度目の全集が1989年に集中的に行われたライヴ録音だ。

このうち、2度目の録音についてはライヴ録音ならではの熱気と迫力が感じられる優れた名演であるとも言えるが、演奏の安定性や普遍性に鑑みれば、筆者としては最初の全集の方をABQによるベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集の代表盤と評価したいと考える。

それどころか、あらゆる弦楽四重奏団によるベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集の中でも、ひとつの規範になり得るトップの座を争う至高の名全集と高く評価したい。

特筆すべきは、個々の奏者が全体に埋没することなど一切なく、かといって個々バラバラの主張では決してなく、曲の解釈、表現の統一感は徹底しており、究極のアンサンブルとしか言いようがない点だ。

この全集では、作曲年代に応じて表現を変化させ、情感豊かにひきあげているが、音楽的に深く掘り下げた演奏となっているところが素晴らしい。

本演奏におけるABQのアプローチは、卓越した技量をベースとした実にシャープと言えるものだ。

全体的に速めのテンポで展開されるが、決して中身が薄くなることはなく、むしろ濃厚である。

鬼気迫るような演奏もあって、隙がなく、ゆったりと聴くには少々疲れるかと思いきや、軽やかに音楽が流れ、十分リラックスして聴ける。

楽想を徹底して精緻に描き出して行くが、どこをとっても研ぎ澄まされたリズム感と緊張感が漂っており、その気迫溢れる演奏には凄みさえ感じさせるところである。

シャープで明快、緊迫度の高い、迫力に満ちた名演奏に聴き手はグイグイ引き込まれ、その自由で大胆、説得力あるアプローチに脱帽しまう。

それでいて、ABQがウィーン出身の音楽家で構成されていることに起因する独特の美しい音色が演奏全体を支配しており、とりわけ各楽曲の緩徐楽章における情感の豊かさには若々しい魅力と抗し難い美しさが満ち溢れている。

すべての楽曲がムラのない素晴らしい名演で、安心して聴いていられるが、とりわけABQのアプローチが功を奏しているのは第12番以降の後期の弦楽四重奏曲であると言えるのではないだろうか。

ここでのABQの演奏は、楽曲の心眼を鋭く抉り出すような奥深い情感に満ち溢れていると言えるところであり、技術的な完成度の高さとシャープさ、そして気宇壮大さをも併せ持つこれらの演奏は、まさに完全無欠の名に相応しい至高の超名演に仕上がっていると高く評価したい。

交響曲に匹敵する世界観や壮大さが、たった4人のアンサンブルの中に凝縮されている。

録音は、初期盤でもEMIにしては比較的良好な音質であったが、これほどの名演であるにもかかわらず、いまだにHQCD化すらなされていないのは実に不思議な気がする。

今後は、とりわけ第12番以降の後期の弦楽四重奏曲だけでもいいので、HQCD化、可能であればSACD化を図るなど、更なる高音質化を大いに望んでおきたいと考える。

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classicalmusic at 07:02コメント(2)ベートーヴェン | アルバン・ベルクSQ 

コメント一覧

1. Posted by 小島晶二   2023年04月17日 07:54
5 和田さんもそう思いますか。私もABQの旧盤ファンで15番とレコードアカデミー賞を受賞した(1983)16番のCDを持っています。ベートーヴェンの弦楽4重奏曲はピアノソナタと並んで精神性の極致とも呼べる至高の世界。しかし故宇野功芳氏は弦楽4重奏曲を苦手にしていたので,口煩い批判が無いのでゆっくり好きな演奏を楽しめますね (笑)。
2. Posted by 和田大貴   2023年04月17日 08:02
アルバン・ベルク四重奏団の合奏はひとりひとりのテクニックが優れていると同時に、アンサンブルの緻密さが既製の楽団のどれをも凌駕しています。そして感覚的にも美感にあふれ、サウンドが洗練されていて、実に美しく、また楽しく味わえます。この全集では、作曲年代に応じて表現を変化させ、情感豊かにひきあげていますが、音楽的に深く掘り下げた演奏となっています。全集全体がきわめて高水準で、ベートーヴェンの音楽が持つ独特の個性の明確な表出には、一期一会的な完成度の高さがあり、これを凌ぐ演奏はおそらく簡単には生まれないでしょう。全体にテンポはやや速めですが、決して軽薄に流れず、むしろメリハリが明確でくっきりとした輪郭を描きます。音楽が絶えず前へ前へと駆動する力にあふれているため、若々しい推進力や軽快な躍動にも欠けることがありません。各奏者の技術的、精神的な充実感も並々ならぬ高さにあり、アンサンブルの緊密度や柔軟性の高さはまさに驚異的というより他はありません。ベートーヴェンの弦楽四重奏曲というと、深遠で高級な音楽といわれ、押さえつけるようなゴリゴリした演奏を有難がる傾向もありますが、それは誤解というもので、音楽なのだからやはりまず美しくなければいけません。そのことをアルバン・ベルク四重奏団は、改めて教えてくれました。深遠な楽想を楽しく聴かせるのが、演奏家の一番の役割と知るべきです。

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Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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