2023年03月19日

指揮者人生最大の挫折を克服😣漸くベルリン・フィルに復帰した時期に集中的に取り組んだ録音🌞マゼール&バイエルン放送響💮ブルックナー:交響曲全集👏🏻


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マゼールが手兵バイエルン放送交響楽団とともに集中的に取り組んだブルックナーチクルスのコンサート記録である。

本全集が廉価で手に入ることも考慮に入れれば、後述のようにすべてを名演と評価するには躊躇せざるを得ないが、全体としては水準の高い演奏で構成された全集と評価してもいいのではないかと考える。

マゼール指揮によるブルックナーの交響曲と言えば、1974年に録音されたウィーン・フィルとの「第5」(英デッカ)、1988年に録音されたベルリン・フィルとの「第7」及び「第8」(ともにEMI)が念頭に浮かぶ。

「第5」については、マゼールが若さ故の力強い生命力と超絶的な才能を武器に、前衛的とも言えるような鋭いアプローチによる演奏を繰り広げていた1960年代のマゼールの芸風の残滓が随所に感じられるなど、ブルックナー演奏としてはやや異色の印象が拭えなかった。

他方、「第7」及び「第8」については素晴らしい名演で、特に、「第7」については、故小石忠男先生がレコード芸術誌において、「マゼールに一体何が起こったのか」とさえ言わしめたほどの成熟した超名演であった。

おそらくは、現在でも、この演奏を指揮者名を伏して聴いた多くの聴き手の中で、指揮者がマゼールと言い当てる者は殆どいないのではないか。

このような同曲演奏史上においても上位にランキングされる超名演が、現在では、国内盤は廃盤で、輸入盤でさえも入手難というのは大変残念な事態であると考えている。

録音当時はカラヤンの最晩年であり、ポストカラヤン争いの本命を自負していたマゼールと、カラヤンへの対抗意識も多分にあったと思う。

ポストカラヤンの候補者と目される指揮者とは鬼気迫る名演を繰り広げていたベルリン・フィルとの絶妙な組み合わせが、途轍もない超名演を生み出す原動力になったのではないかと考えられる。

「第8」も、「第7」ほどではないもののレベルの高い名演であり、仮にマゼールが、本人の希望どおりベルリン・フィルの芸術監督に就任していれば、ベルリン・フィルとの間で歴史的な名全集を作り上げた可能性も十分にあったと言える。

しかしながら、運命はマゼールに味方をしなかった。

芸術監督の選に漏れたマゼールは、衝撃のあまりベルリン・フィルとの決別を決意。

ドイツ国内での指揮さえも当初は拒否したが、その後数年で、バイエルン放送交響楽団の音楽監督に就任。

さらに、1999年になって漸くベルリン・フィルの指揮台にも復帰した。

要は、本全集は、マゼールが指揮者人生最大の挫折を克服し、漸くベルリン・フィルに復帰したのとほぼ同時期に録音がなされたということである。

本全集録音の数年前からは、ヴァントがベルリン・フィルとの間で、ブルックナーの交響曲の神がかり的な超名演の数々を繰り広げており、マゼールとしても、ベルリン・フィルとは和解はしたものの、かかる成功を相当に意識せざるを得なかったのではないかと考えられる。

そうしたマゼールのいささか屈折した思いが、文句がない名演がある反面で、一部の交響曲には、意欲が空回りした恣意的な解釈が散見されるというやや残念な結果に繋がっている。

文句のつけようがない名演は、「第0」「第1」「第2」の3曲であり、第3番以降になるとやや肩に力が入った力みが垣間見える。

特に、「第5」及び「第7」は、テンポを大幅に変化させるなど、いささか芝居がかった恣意的な表現が際立っており、前述した過去の演奏に遠く及ばない凡演に陥ってしまっているのは大変残念だ。

しかしながら、全集総体としては、水準の高い演奏が揃っており、破格の廉価盤であることを鑑みれば、十分に推薦に値するBOXであると考えられる。

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classicalmusic at 15:09コメント(0)ブルックナー | マゼール 

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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