2015年05月12日

カラヤン&ベルリン・フィルのシェーンベルク:浄夜、ブラームス:交響曲第1番(1988年ライヴ)


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2008年はカラヤンの生誕100年ということで、数々の企画盤やライヴ音源の復刻が行われたが、本盤もその貴重な1枚。

1988年ロンドンでのベルリンフィルとの演奏会で、結果的にこれが最後のロンドン公演だったとのこと。

楽器の到着が間に合わなかったドタバタや、もうあまり体が動かせなくなっていた帝王の姿など、その模様をカラヤンの評伝も書いたリチャード・オズボーンがライナーノーツに記している。

曲目はシェーンベルクの「浄夜(弦楽合奏版)」とブラームスの交響曲第1番で、音質はあまり良いとは言えないが、演奏は名演の前に「超」をいくつか付してもいいくらいの超絶的な大名演だ。

ここでの「浄夜」に聴かれる重厚な美音の洪水、このような重厚な演奏は、現在のベルリンフィルからはもはや聴けないものだ。

今の感覚からするとやや重たいかもしれない曲線美、降り注ぐような弦の霜降り的な濃厚さ、しかし決してテンポはもたれはしないそのバランス感覚は絶妙。

あくまで後期ロマン主義の傑作としての演奏で、世紀の替り目に書かれたシェーンベルクが、ココシュカやエゴン・シーレと魂を同じくする音楽というよりはクリムトの時代の背景音楽としてのゴージャス感で響いてくる。

しばしば疎ましかったカラヤン独特のレガート・スタイルも、曲との適合か、心地良く感じられるほど。

R.シュトラウスの名演で鳴らしたカラヤンが「グレの歌」を手がけなかったのが惜しくなった。

一方のブラームスは壮観なまでに音響が聳え立ち、何かドラマが人工物にすり替えられているような抵抗を感じないではないのだが、しかしやはりこれを実演で聴いて圧倒されないではいることは出来なかったことであろう。

内声の隅々に至るまで充実した分厚さ(あまりにもべったり塗り籠めていると嫌悪を覚える方もいるかもしれない)や、集団の高度な自発性がもたらす弾力性(ふと精強な軍隊のイメージが頭をよぎるのはやはり否めない)が相俟って、轟々たる推進力が生まれている。

特に終楽章でこんなコーダを築き上げられるオーケストラは他になく、その場に居合わせたら恐怖すら覚えたかもしれない。

カラヤンのブラームスの「第1」には他にも数々の名演があるが、その中でもこの演奏はダントツだと思う。

とても死の1年前の指揮者によるものとは言えない、情熱的で熱い演奏が繰り広げられている。

やはり、カラヤンはライヴの人だったのだ。

ロイヤル・フェスティバル・ホールの聴衆にとって当夜のことは確かに一生の思い出であろう。

もはや好悪を超えた次元にあった音楽家集団の記録として忘れられなくなりそうだ。

カラヤンの録音芸術における完全主義により、テクノロジーの粋を極めた数々の作品は、それゆえに支持するもの、拒否するものも多かった。

しかし、カラヤンの数々のアプローチは録音技術における数々のアカデミックな研究につながり、多元的な成果を生み出した。

カラヤンが常に新しいメディアに興味を示したのは、なにか新しいことを伝えられる媒介を探求するという彼の姿勢がそのまま投影されたものであり、時代を先駆けたマルチな芸術家であった証左である。

逆に言えば、録音技術というフィルターの効果の薄いライヴ録音(もちろんリマスターはあるけれど)はまた別のものを伝える貴重な記録となる。

本ディスクも録音状態から言えば必ずしも良好とは言えないし、またカラヤンが目指した究極形態と比して完成度は劣るが、演奏それ自体として魅力が横溢している。

立派な、といえば、もう立派すぎるくらいの演奏で、在りし日のカラヤン&ベルリン・フィルの音作りがどういうものであったかを典型的に伝えてくれる1枚には違いない。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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