2015年04月18日
カラヤン&ベルリン・フィルのベートーヴェン:交響曲第6番「田園」、R.シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」(1972年ライヴ)
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これは凄い超名演だ。
カラヤンは、ライヴでこそ実力を発揮する指揮者であるが、本盤はそうしたカラヤンの面目躍如たる至高の超名演に仕上がっている。
カラヤンの「英雄の生涯」については、先般、同じロンドンでの1985年のライヴ録音が発売され、超名演であったが、次いで発売された1972年ライヴ盤も、それに匹敵する素晴らしい名演だと思う。
それどころか、最もカラヤンの個性が発揮された演奏は、紛れもなく本盤に収められた演奏であると言えるのではないだろうか。
1972年と言えば、カラヤンとベルリン・フィルという黄金コンビの最良の時代であり、指揮者とオーケストラが一体となり、両者が最高のパフォーマンスを示していた。
本演奏においても、そうした全盛期のこの黄金コンビの演奏の凄さを味わうことが可能だ。
ベルリン・フィルは、一糸乱れぬ鉄壁のアンサンブル、金管楽器の朗々たる響き、桁外れのテクニックを示す木管楽器の響き、分厚い弦楽合奏、そして雷鳴のように轟きわたるティンパニの迫力などが一体となり、まさにオーケストラ演奏の極致とも言うべき圧倒的な名演奏を繰り広げている。
カラヤンは、流麗なレガートを施すことによって、楽想を徹底的に美しく磨きあげており、シュヴァルべのソロも抜群の巧さで、本ライヴ録音の価値を更に高めている。
マイクの位置のせいか、金管楽器がやや強く聴こえるなど、録音のバランスがいささか悪い気もするが、この時代のライヴ録音からすれば、水準以上の音質であり、全盛期のカラヤンの圧倒的な統率力と、ベルリン・フィルというスーパー軍団の重厚かつ超絶的な技量を満喫できるのは贅沢な限りだ。
ジャケットのデザインも含め完全無欠とも言うべき本演奏は、同曲演奏史上究極の名演との評価もあながち言い過ぎではないと考えられる。
しかしながら、好き嫌いでいうと、筆者としては、カラヤンの統率力に綻びが見られるとは言え、後年の1985年のライヴ録音の方が好みである。
というのも、1985年盤には、カラヤンの自省の念も込められた枯淡の境地が感じられるからであり、演奏の味わい深さという意味では、1985年盤の方をより上位に掲げたいと考える。
他方、「田園」は、素っ気なささえ感じられるような快速のテンポのせいか、カラヤンとの相性が必ずしもいい曲ではないと考えているが、本盤では、全盛期のライヴということもあり、同時期のスタジオ録音よりはずっと楽しむことが出来た。
ベートーヴェンの全交響曲中で、カラヤンがあまり名演を遺していないのが同曲であると考えている。
その理由は、カラヤンが、他の指揮者ならば必ず反復をする第3楽章を含め、すべての反復を省略するなど、快速のテンポで全曲を演奏するが、スタジオ録音というハンディもあって、全体として聴き手に、平板で、せかせかとした浅薄な印象を与えがちなことが掲げられる。
しかしながら、本盤は、ライヴにおけるカラヤン、そしてベルリン・フィルの圧倒的な高揚感と、録音の鮮明さによって、いつものように快速のテンポでありながら、全盛期のカラヤン&ベルリン・フィルでないと成し得ないような重厚にして、しかも流麗な至高・至純の音楽を構築することに成功している。
もしかしたら、本盤こそ、カラヤンが「田園」という楽曲について、聴き手に伝えたかったことの全てが込められているのかもしれない。
筆者も、カラヤンの「田園」で感動したのは、本盤が初めてである。
解説は、リチャード・オズボーンであり、内容はいつもながら実に素晴らしい。
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