2015年04月19日

ムーティ&ベルリン・フィルのブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」、第6番


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クラシック音楽界史上最高の黄金コンビとも謳われたカラヤン&ベルリン・フィルも、1982年のザビーネ・マイヤー事件を契機として、修復不可能にまでその関係が悪化した。

加えて、カラヤンの健康状態も悪化の一途を辿ったことから、1980年代半ばには、公然とポストカラヤンについて論じられるようになった。

カラヤンは、ベルリン・フィルを事実上見限り、活動の軸足をウィーン・フィルに徐々に移していったことから、ベルリン・フィルとしてもカラヤンに対する敵対意識、そしてカラヤンなしでもこれだけの演奏が出来るのだということをカラヤン、そして多くの聴衆に見せつけてやろうという意識が芽生えていたとも言えるところである。

したがって、1980年代半ば頃からカラヤンの没後までのベルリン・フィルの演奏は、とりわけポストカラヤンの候補とも目された指揮者の下での演奏は、途轍もない名演を成し遂げることが多かった。

その典型例が、本盤に収められたブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」と第6番である。

ムーティは、先輩格のジュリーニやライバルのアバド、マゼール、ハイティンク、小澤などと同様にポストカラヤンの候補と目された指揮者の1人であり、そうしたムーティとベルリン・フィルが1980年代半ばに録音した演奏がそもそも悪かろうはずがない。

それどころか、もちろんムーティは実力のある指揮者ではあるが、当時の実力を遥かに超える途轍もない名演に仕上がっていると高く評価したいと考える。

いずれにしても、このコンビによるモーツァルトのレクイエムのスタジオ録音(1987年)、マゼールとのブルックナーの交響曲第7番のスタジオ録音(1987年)、アバドとのヤナーチェクのシンフォニエッタのスタジオ録音(1987年)、小澤とのチャイコフスキーの交響曲第4番(1988年)など、当時のベルリン・フィルの演奏は殆ど神業的であったとさえ言えるところだ。

それはさておき、本演奏は素晴らしい。

最近では円熟の指揮芸術を聴かせてくれているムーティであるが、本演奏の当時は壮年期にあたり、生命力に満ち溢れた迫力満点の熱演を展開していたところである。

ところが、本演奏は、むしろ近年のムーティの演奏を思わせるような懐の深さや落ち着きが感じられるところであり、あたかも円熟の巨匠指揮者が指揮を行っているような大人(たいじん)の至芸を感じさせると言えるだろう。

派手な音の効果だけで圧倒しようとするブルックナーの交響曲演奏とは対照的に、この作曲者特有の口べたで木訥と言われる内面的な〈渋さ〉を巧みに表現した名演。

とはいうものの、明快さ、スマートさが信条のムーティならではの巧みさ、オーケストラ自身の響きの美しさも健在。

ベルリン・フィルの重量感溢れる渾身の演奏もそれを助長しており、演奏全体としては、同曲最高の超名演とも呼び声の高いベーム&ウィーン・フィルによる演奏(1973年)やヴァント&ベルリン・フィルによる演奏(1998年)にも比肩し得るほどのハイレベルの演奏に仕上がっていると言っても過言ではあるまい。

前述のモーツァルトのレクイエムと同様に、当時のムーティとしては突然変異的な至高の超名演と言えるところであり、その後、ムーティが現在に至るまで、モーツァルトのレクイエムともどもブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」と第6番を2度と再録音をしようとしていない理由が分かろうというものである。

いずれにしても、本盤の演奏は、ムーティ&ベルリン・フィルがこの時だけに成し得た至高の超名演と高く評価したいと考える。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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